富人を羨(うらやむ)むことなかれ [倫理]
富人を羨むことなかれ。
渠( か)れ今の富は、安くんぞ其の後の貧を招かざるを知らんや。
貧人を侮ること勿れ。
渠れ今の貧は、安くんぞ其の後の富を胎せざるを知らんや。
畢竟( ひっきょう)天定なれば、各( おのおの)其の分に安んじて可なり。
「 言志晩録」第一九〇条
佐藤 一斎 著
岬龍 一郎 編訳
現代語抄訳 言志四録
PHP研究所(2005/5/26)
P170
富める人をうらやんではいけない。
その人の富が、どうして後日の貧乏を招かないといえるだろうか。
貧しい人を馬鹿にしてはならない。
その人の今の貧乏が、どうして将来の富のもとでないといえるだろうか。
貧富は天の定めるところであるから、各人はその分(立場・環境)に安んじて最善を尽くせばいいのである。
子生まれて母危うく、鏹(きょう)積んで盗窺う。
何の喜びか憂いに非ざらん。
貧は以って用を節すべく、病は以って身を保つべし。
何の憂いか喜びに非ざらん。
故に達人は、当に順逆一視して、欣戚(きんせき)両(ふた)つながら忘るべし。
洪自誠
守屋 洋 (著), 守屋淳 (著)
菜根譚の名言 ベスト100
PHP研究所 (2007/7/14)
P78
子供が生まれたとき、母親の生命は危険にさらされる。
財産が多くなれば、それだけ泥棒に狙われる。どんな幸せも不幸のタネにならないものはない。
貧乏だと極力無駄使いは避けるし、病気がちだとふだんから健康に気をつける。
どんな不幸を幸せのきっかけにならないものはない。
幸せも不幸も同じこととみなし、喜びも悲しみも忘れてしまうのが、達人の生き方だ。
これを得て悦ぶべきものは、これを失えば悲しみとなるべし、故に今日悦ぶの時において他日悲しむの時あるを忘るべからず。
福沢 諭吉 (著)
学問のすすめ
岩波書店; 改版版 (1978/01)
P54 学問のすゝめ 五編 明治7年1月1日の詞
P56
イエス
富を持つ者が神の国に入るのは何と難しいことだろう! 裕福な者が神の国に入るより、らくだが針の穴を通る方がまだたやすい。
マルコ伝
P57
ブッダ
富は多くの者を貪欲にする。それはよろめきながら破滅へと向かう隊商のようなものだ。利己心の罪を増し、所有欲を断とうとする心を妨げる富は、自分を守るものではなく障害物である。
ジャータカ・マーラー
今枝 由郎 (翻訳), 鈴木 佐知子 (翻訳), 武田 真理子 (翻訳), マーカス・ボーグ
イエスの言葉ブッダの言葉
大東出版社 (2001/10)
咲かざれば桜を人の折らましや
さくらの仇はさくらなりけり
他人がうらやましいと思っておることが、その人には苦痛となることが多い。
ゆえに、いかなる人でも、必ずそれぞれ相当した逆境がある。ほかよりは得意らしく見えても、心のうちには泣いておることが多い。
修養
新渡戸 稲造 (著)
たちばな出版 (2002/07)
P284
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