出世 [日本(人)]
日本は昔から、能力ある人間には、まったくの下層民から最上位まで「出世」できる機会に恵まれた珍しい国である。
会田 雄次 (著)
日本人の意識構造―風土・歴史・社会 (講談社現代新書 293)
講談社 (1972/01)
P127
安岡正篤の生まれた堀田家は、当時家運が衰えて、正篤を上の学校に入れる資力がありませんでした。そこで安岡家に養子として迎えられることになりました。
当時の日本は、先にもふれましたが、厳然たるエリート社会でしたが、エリートになるチャンスは広く開いていました。
一高の先輩の広田弘毅は石工の息子で、小学校時代は「いぐさ売り」をして生計を助け、親も自分も石工になるつもりでしたが、あまり勉強ができるので、周囲の勧めと篤志家の援助で学問を続けることになりました。
こうしたことも、江戸時代以来の日本の文化、もっと遡れば、後漢の文治社会以来の伝統です。
岡崎 久彦 (著)
教養のすすめ
青春出版社 (2005/6/22)
P180
司馬 士農工商という階級で、日本人全体を縛りつけたという大変悪いところはありますが、そうかといって絶対的階級制ではない。
学問なり、剣術、医術という、そういう方面の錬達者なら、百姓の階級からどんどん出て来て士分階級に移っておりますね。そういう窓は割合ひろくあけてあって、風が通っている。
海音寺 だから日本には革命が起らないという人もありますね。いつの時代にも、日本は階級が固定していない。大体のきまりはあるけれども、すぐれた人間にはどこかに上る道が用意されている。
新装版 日本歴史を点検する
海音寺 潮五郎 (著), 司馬 遼太郎 (著)
講談社; 新装版 (2007/12/14)
P148
コメント 0