SSブログ

価格の向こう側 [社会]

   モノの価格とは不思議なものだ。その高さを自慢する場合もあれば、いかに安く買ったかを競うこともある。まさに評価はその時と場合による。

~中略~
「お客様のために」を旗印に、価格競争を競う流通。その裏で、命の糧を生産する一次産業に後継者がいない最大の理由は、食べ物を作る人が食えない状況にあるからだ。「外国と仲良くしておけば、いつでも買えるさ。」という考え方もあるが、将来日本に米を作り、魚を捕る能力、すなわち「自給力」がある人々がいなくなれば、農地はただの地面であり、海はしょっぱい水にすぎない。国力は衰え、量の安心・安全は確実に揺らぐ。

食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側
西日本新聞社 (2009/09)
P4


食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側 (西日本新聞ブックレット)

食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側 (西日本新聞ブックレット)

  • 作者: 西日本新聞社「食くらし」取材班
  • 出版社/メーカー: 西日本新聞社
  • 発売日: 2023/08/26
  • メディア: 単行本

 

P10
上肉が高くなれば、量を減らしたり、並肉に変えて調理を工夫した。それが節約の技だった。変わって今は、加工食品を中心とするパック買いの時代。チェックするのは単価だけ。値上がりを吸収するため、中身が低質化、少量化しても気づけない。「安いものを見つけて賢く食費を削ったつもりが、口に入れるものは知らぬ間に”貧しく”なっていた・・・。今の食卓では、そんなことが起こり得ます。

P11
「そうした「減らせないもの」の出費(住人注;家族レジャー、洋服、自分や子どもの習い事、通信費、インテリア,etc.)に押されて、食費は底値買いで削られていく」(岩村)
今、そんな「家計の都合」を背景に、生鮮食品までが、まるで家電製品かのような激しい底値競争に巻き込まれている。
「その構図が、正直な生産者やメーカーを追い詰め、ますます偽装を生みやすくするんじゃないかしら」
現代家族の食卓から見える「日本の行く末」を岩村は危惧する
岩村洋子;広告会社「アサツーディ・ケイ」(東京)200Xファミリーデザイン室 室長

P13
「豆腐に占める豆代は売値の10~15%」(ある大手メーカー)といわれる業界で激安豆腐が成り立つのは安い輸入大豆を使うからか、大量生産や機械化によるコスト削減か、あるいは安い豆腐を客寄せにして、他の商品で儲ける作戦かー。
「豆腐自体を増やすやり方もあるとです」。荒木は言う。
それは豆腐を固めるとき、にがりよりも凝固力の強い硫酸カルシウムやグルコノデルタラクトンなどの凝固剤を使うやり方。薄い豆乳でも固まるから、同じ大豆の量で大奥の豆腐が出来る。ある生協では、同じ木綿豆腐でも、高いものと安いものによって使う大豆の量を使い分けている。形は同じでも、含まれる栄養成分の割合が違ってくるわけだ。

P16
「よく売れる相場」(全国チェーンのスーパー)で試算すると茶わん一杯分の米は約29円
その価格で変えるものー。「ポッキー」だと約6本。「カップヌードル」は約1/5個。「リポビタンD」は約1/5本「ぜいたく」に見えた無農薬米も、茶わん一杯約43円。特売の缶コーヒーより安かった。
他の食品なら「安い」と買い込む価格でも、米なら「高い」とそっぽを向く。私たちは、茶碗一杯の価格をしらないまま、農家にいっそうのコストダウンを迫ってきたことになる。

P89
昔ながらの製法で作られた1丁百五十円の豆腐と、ドラッグストアーで買える1丁三十円の豆腐。
包装を隠し「百五十円の方はどっち?」と質問すると、記者一人を含む七人全員が正解。「大豆の味ですぐ分った」という福岡県筑後市の給食調理員田中ひろみさん(54)は「安い豆腐ばかり食べていたら、本当の味が分らなくなるかもしれませんね」と続けた。

長期企画「食卓の向こう側」第12部として、身近な食べ物の価格から生産現場の実態を報告した前半(08年12月16-25日)、「私たちの生活防衛術」と題した後半(09年二月17日~25日)


 

食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側 (西日本新聞ブックレット)

食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側 (西日本新聞ブックレット)

  • 作者: 西日本新聞社「食くらし」取材班
  • 出版社/メーカー: 西日本新聞社
  • 発売日: 2023/08/26
  • メディア: 単行本

 

 

P155
図32は最新の「商業統計」から作成した、小売り業態別の食料品販売額に占めるシェアを示したものです。
大手の総合スーパー(イオンヤイトーヨーカドーなど、衣食住に関わる生活用品すべてを販売する業態、GMSと略される)のシェアは9%程度しかなく、近年伸びていません。
また、全体の売り上げも二〇〇七年には一九九九年の84%まで低下しており、客離れが進んでいる傾向が見られます。
 一方、これまで大手に押されてきた、地方を中心に展開するスーパー、つまり食品スーパー(食品を中心的に扱う小規模な地域的スーパー、SMと略される)が息を吹き返しています。地域密着型の売り場作りで人気を取り戻しつつあるのです。

P158
北九州市に本社のある「ハローデイ」も、鮮魚販売では全国的に名高い食品スーパーです。地元卸売市場から仕入れる品揃えには目を見張るものがあります。
さらに特筆すべきは調理加工度の高さで、一つの素材を幾通りにも加工し、メニューを提案しています。好きな魚をその場で寿司や天ぷらにしてくれるサービスもある。
鮮魚を右から左へ流すことで儲けようとするのではなく、お客様の望むサービスを店頭で行うという付加価値を売りにしているのです。
 やはり人件費は高くなりますが、大手スーパーが徹底的に人件費を削減することで利益を高めようとしてきたのとは逆に、あえて人件費をかけることで消費者の食卓に近づき、付加価値を高めようとしています。
同社も増収増益を続けており、近隣の大手スーパーに少しも負けていません。

日本人が知らない漁業の大問題
佐野 雅昭 (著)
新潮社 (2015/3/14)



日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)

  • 作者: 佐野 雅昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/03/14
  • メディア: 新書


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ショッピング

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント