上司と部下の「義理と人情」 [処世]
多年の関係によって資本家と労働者の間に、折角結ばれた所の言うに言われぬ一種の情愛も、法を設けて両者の権利義務を明らかに主張するようになれば、勢い疎隔さるるに至りはすまいか。
~中略~
資本家は王道をもって労働者に対し、労働者もまた王道をもって資本家に対し、その関係しつつある事業の利害得失は、すなわち両者に共通なる所以を悟り、相互に同情をもって終始するの心掛けありてこそ、初めて真の調和を得らるるのである。
果たして両者がこうなってしまえば、権利義務の観念のごときは、徒(いたずら)に両者の感情を疎隔せしむる外、ほとんどなんらの効果なきものと言って宜かろう。
「算盤と権利」
渋沢栄一 (著)
論語と算盤
角川学芸出版 (2008/10/25)
P232
英彦山神宮奉幣殿
故郷の家では、召使は地位は低くても、家族として扱われ、主人と共に喜び、共に悲しみ、また主人も、召使を親身になって世話したものでありました。
こんな風でも、主従の間がみだりに狎々(なれなれ)すぎるということはありませんでした。敷居を境として、見えない境界線がはっきりとひかれていたのですから、召使がこの境を越えたり、超えようと思ったりなどということは、聞いたこともありませんでした。
日本の召使は、そこに深い誇りを感じていたからでございます。
クララは仕事に忠実でしたが、その楽しみは、家の外にあったようでありました。ですから、毎週の午後の定休の半日がめぐって参りますと、驚くほどの勢いで働き、早く片付けてしまうことばかりを考えていたようでした。
そんな姿を見るにつけても、日本で見なれたおとなしい、礼儀正しいとしの姿や別れの時の品のよいお辞儀の仕方など思い出さずにはいられませんでした。
杉本 鉞子 (著), 大岩 美代 (翻訳)
武士の娘
筑摩書房 (1994/01)
P198
上司を引き立てる
上司が引き立つようにしておけば、上司も花をもたせてくれる。それがヒエラルキーのお返しである。
>>>ヒエラルキー
イーサン・M・ラジエル (著), 嶋本 恵美 (翻訳)
マッキンゼー式 世界最強の仕事術
ソフトバンククリエイティブ (2006/9/22)
P117
一九 定公問う、君、臣を使い、臣、君に事( つか )うるにこれを如何。
孔子対えて曰わく、君は臣を使うに礼を以てし、臣は君に事うるに忠を以てす。
~中略~
魯の定公がたずねられた。
「君主が臣下をつかい、臣下が君主につかえるのには、どういう心がけがいるだろう」
孔子がかしこまっておこたえした。
「君主が臣下をつかうのには礼のさだめを守り、臣下が君主につかえるのにはまごころをつくすことでございます」
八佾篇。
論語
孔子 (著), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07)
P76
あるとき直属の上司が行ってみたいといってきたので、新宿のクラブに案内したことがある。
大いに盛り上がって上司も至極ご満悦の体であった。帰るころになって、上司が勘定のことについて何もいい出さないので、当然のことながら、私のツケにした。
おもしろいところに連れていってくれた、と帰り際と翌朝顔を合わせたときにいわれて感謝された。勘定はいくらだったかと聞かれたり、請求書を受け取ったら渡してくれといわれたりするのだと思っていたが、その期待はみごとに裏切られた。
その夜の話が話題になることは二度となかった。
以後、私が転勤になるまでの二年弱の間、表向きは上司としての彼の指示に従っていたが、人間関係としてのつきあいにおいては一線を画していた。
料金の額も家計に響くくらあいであったと思うが、それは私にとっても同じだ。その点をうやむやにしたずるさを嫌悪した。非常識で度量のない人であると考えた。それで、ちょっと無理な仕事を指示して来たり筋の通らない話を持ってきたとき、私はきっぱりと断っていた。
上司が身銭を切って部下に奢ってくれるから、部下が「恩義」を感じていたのである。会社という組織の中で働いているのだが、上司が自分の金を使って飲食をさせてくれたので、「個人」としての上司に対して「絆」を感じる。そこで、上司と部下というビジネス上の関係のうえに、親分と子分という人情の世界の関係が生じる。
~中略~
口数は少ない。くどくどいわなくても、以心伝心である。普段から腹を割ったコミュニケーションをしているので、心から心へと直接に伝達できる仕組みができている。まったく人間的なふれあいをしないでいて、上司風を吹かせて「そのくらい以心伝心でわからないのか」などという人がいるが、それは無茶というものだ。
超説得力
山崎 武也 (著)
講談社 (2003/11)
P210
2014年3月の「労働環境に関する意識調査(日本法規情報(株)法律問題意識調査レポート)」では、職場に不満があるという回答が九割にのぼり、その半数が上司、同僚、部下等の人間関係とのことです。
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日刊工業新聞社 (2015/2/25)
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