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歴史と真実 [ものの見方、考え方]

 ひとつの史実については、複数の本で調べ、そこから得られた情報を総合して、自分の意見を持つようにするといい。
せいぜいそこまでが、歴史という学問の手の届く範囲だと私は思っている。残念だが、「歴史的真実」など知ることはできないのだ。


 歴史書を読んでいると、歴史的事件の動機や原因が書かれていることがあるが、それをそのまま信じてはいけない。
その事件にかかわった人物の考え方や利害関係を考慮に入れたうえで、著者の考察が正しいかどうか、ほかにももっと可能性の高い動機はないか、自分で考えて見ることが大切だ。
その時、卑屈な動機やささいな動機を切り捨ててはいけない。というのは、人間は複雑で、矛盾だらけの生き物だからだ。感情は激しく移ろいやすく、意思はもろく、心は体調に左右される。


父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P83



父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: 文庫



 現在の考古学では、エリコはイスラエルの成立よりずっと前から廃墟になっていたことがわかっています。どうもこの廃墟を見た、のちのイスラエルの人々が、これを自分たちの先祖が攻め落とす物語に作り変えた、ということのようです。
歴史はつねに、こうしたフィクションがついてまわります。
しかし、これもまた、「過去」という遺産と対話するための一つの方法であるといえるかもしれません。


大城 信哉 (著)
あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本
永岡書店 (2010/4/10)
P107 旧約聖書



あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本 (ナガオカ文庫)

あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本 (ナガオカ文庫)

  • 作者: 大城 信哉
  • 出版社/メーカー: 永岡書店
  • 発売日: 2010/04/10
  • メディア: 文庫



P3
 大学生は面白いことに、大学教授の本よりも司馬遼太郎さんの本を多く読んでいます。 しかし、大学の歴史講義では「あれは文学」とされて、教授と学生が司馬文学について語り合うことは、まずありません。


P5
 現在では、本人が好むと好まざるとにかかわらず、「司馬史観」という言葉が使われるようになり、いま述べたように、彼が遺した膨大な小説や、エッセイ・史論は私たちが歴史を知るうえで大きな助けとなっています。しかし、「司馬遼太郎を読めば日本史がわかる」というのは半分は正しくて、半分は間違いです。
 それにはふたつの理由があります。ひとつは当たり前のことですが、司馬さんの作品はあくまでも文学であって、歴史そのものではないからです。日本史を知るためには、なぜこういうことを書いたのか、そこにどういう史実のつながりがあるのか、ということを補って読む必要があります。
 もうひとつは司馬さんの歴史の見方に起因しています。たとえば日本陸軍をつくり上げた権力体のもとをたどっていくと、織豊(しょくほう)時代に濃尾平野に生まれた、のちに天下人になっていく人たちの話に行きつく、というように、司馬さんにとっては戦国史も幕末史も、すべて日本近代史のための歴史であり、そこには司馬さんなりの独特の歴史の見方が働いています。そのことを十分に理解して読まなければ、いきなり小説を渡されても、その神髄にたどり着くことはできません。


「司馬遼太郎」で学ぶ日本史
磯田 道史 (著)
NHK出版 (2017/5/8)




「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2017/05/08
  • メディア: 新書




 歴史というと、過去をたしかめて、未来への針路をさぐる学問と考えがちですが、そういう、たんなる実利的な手段だけではありません。人が歴史にひかれるのは、そこにノスタルジーを覚えるからです。べつに、何か現実に役立てようとするわけではありません。
 歴史は役に立たなくともともいい。事実と異なってもいっこうにかまわない。歴史に真実があるから価値があるのではありません。歴史の真実など、実際にはありえるはずがありません。
歴史家はあれこれと推理し、しかめつらしい証拠を並べ立てて、夢を見ているだけです。
 百年の歴史すら、正しく伝わらないものです。まして千年をへた歴史が、正確に再現されるはずがありません。
 いま、この同時代の真実すら、私たちには見定めがたい。日々、私たちの目の前に起こり、ジャーナリズムがこぞって報道する出来事は、はたして真実でしょうか。


百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)
P194




百歳人生を生きるヒント

百歳人生を生きるヒント

  • 作者: 五木 寛之
  • 出版社/メーカー: 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
  • 発売日: 2017/12/01
  • メディア: 新書




学問としての歴史学は厳密だから、史料にないことは書けない。しかし、秀吉の下積み時代を知っている浜松の人々が、秀吉との戦いに出陣する時に、馬鹿にして悪口を言わなかったと考えるほうが難しい。史料に書かれていることだけで記された歴史は、歴史の真の姿から遠ざかっていることもある。
だから文学としての歴史は想像を含むけれども、決して軽んじてはいけないものだと思っている。


日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2017/10/18)
P112



日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 新書



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