政治的な自然保護 [社会]
「自然保護」というのは人類の歴史の中でそんなに古い概念ではない。というのは人類の歴史の中で、その99パーセント以上は狩猟生活をしていて、人類も自然の一部であったからだ。
積極的に「自然保護」を唱え始めたのは、二〇世紀の後半になってからだ。今では正義の御旗になっている
~中略~
一九七〇年にWWFの勧告により、国立公園に指定されたペルーのマヌー国立公園の中には、先住民が住んでいた。ここの先住民は長年森を壊すことなく、森と調和して生きてきた人々だ。
常識的には、彼らこそが優先的に自然保護の恩恵にあずかるべきだ。
ところがペルー政府は「先住民は国立公園外に出て行ってもらう」ことによってアマゾンの中でも特に多様で豊かな自然を守ることにした。
~中略~
WWFやペルー政府は「ここに一つ、人類の貴重な遺産が確保された」と言って手放しで喜んでいる。ユネスコの世界遺産にも登録された。
しかし、その裏では先住民たちの苦悩が続いている。
関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P96
グレートジャーニー ――地球を這う〈1〉南米アラスカ篇 (ちくま新書)
- 作者: 関野吉晴
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/10/31
- メディア: Kindle版
グレートジャーニー ――地球を這う〈1〉南米アラスカ篇 (ちくま新書)
- 作者: 関野吉晴
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/10/31
- メディア: Kindle版
タグ:関野 吉晴
コメント 0