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仕事は「預りもの」 [ものの見方、考え方]

 「仕事は自分のためにやっている」という考えが能力主義、業績主義の根底にはあります。
「自分に能力があるから、会社の業績を伸ばせたのだ」「会社の業績が伸びたのだから、自分が偉くなるのは当然だ」おいう考えです。ここにはまず「自分」が先にあります。そのせいで世のため、人のためという気持ちがなくなるのです。
 しかし、仕事というのは世の中からの「預りもの」です。歩いていたら道に穴が空いていた。危ないから埋める。たまたま自分が出くわした穴、それを埋めることが仕事なのです。 

 天皇陛下の仕事は「預りもの」の代表例です。あんなにたいへんな仕事はありません。自分で選ぶこともできなければ抜けることもできません。オフもありません。
「今週末は天皇を休業します」とはいかないのです。

養老 孟司 (著)
養老訓
新潮社 (2007/11)
P68

養老訓 (新潮文庫)

養老訓 (新潮文庫)

  • 作者: 孟司, 養老
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/06/29
  • メディア: 文庫


TS3E0176 (Small).JPG皿倉山

P81
自分だけで生きているのだったら、税金を払う必要はありません。私も虫だけ採っていて生きられるのならば結構なことです。しかしいくらなんでもそうはいかない。
 人は虫だけでは生きられません。私も虫は食べない。食物がほしかったら、そのための労働をしなくてはいけなせん。他にも必要なものはいろいろとあります。その部分が社会で拡大しているだけです。

それを拡大して組織化するとあちこちで仕事が発生する。そして仕事のほうから、個人に「こうあってほしい」と要求がくる。そのとき個人としての本心はともかくとして、それにあわせるぐらいの芝居が打てなければ大人ではないだろうということです。本居宣長はそうしていた。

 仕事用の人格を作ってあわせて暮らすということです。

養老訓

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価格:1,260円(税込、送料別)


養老 だから、その個性ってやつですよ。日本には個の哲学がないところに、戦後になってその「個性」というのを持ち出してきたんです。この間、僕、職安の垂れ幕見て怒ったんだ。「自分に合った仕事が見つかるかもしれない」ってでっかく書いてあるんだよ。ふざけんじゃねえって。
俺なんか仕事に合わせるのにいかに苦労してきたか(笑)。
仕事ってのはお前のためにあるんじゃなくて、世の中が上手に動いていくためにあるんだから、てめえに合った仕事だなんて、ふざけたことを言うんじゃねえって、ほとんど小言幸兵衛になっちゃたんだけど。

養老 孟司 (著) 玄侑 宗久 (著)
脳と魂
筑摩書房 (2007/05)
P162

P165
「本当に好きなことを仕事にしたい」
「仕事を通して自分らしさを実現したい」
 こんな風に仕事に「夢」を託せた時代は、いつの間にか終わってしまった。
 二〇一一年に四年制大学を卒業した学生約五六万人のうち、六%に当たる約三万三〇〇〇人が進学も就職の準備もしていない「ニート」だったことが、文部科学省の調査で明らかになっている。  そのほかにも「就職準備中」が約五万、「進学準備中」が三六〇〇人なので、「就職していない」という若者を総計すると、全卒業生の一五%を超えることになる。

P167
こうして「とりあえず入れるとこならどこでも」と就職していく学生のその後は、大きく分けてふたつある。
 ひとつは、しぶしぶ就職してみたら意外に仕事が面白く、思いがけず生き生きと働く、というパターン。
 そしてもうひとつは残念ながら、入社してみたもののやはり仕事の内容にも会社の環境にも満足できず、早晩、退職してしまうというパターン。
「若者はなぜ3年で辞めるのか?」(城繁幸、光文社新書、二〇〇六年)という本が話題になったことがあったが、いま多くの新入社員は半年、一年で辞めてしまう、とある企業の人事課の担当者に聞いたことがあった。  彼らは転職するわけではなく、「とにかくつらいから休みたい」と退職するので、結局はフリーターになってしまう。
~中略~
 では、彼らはどういう仕事につけば、「やりがい」や「自分らしさ」を実感することができるのだろう。  その他大勢ではなくて、「あなたがいなければダメなんだ」と自分の存在意義を実感させてくれるような仕事がそれだろうか。
~中略~
 おそらく「やりがい」「自分のかけがえのなさ」などというものは、すぐには手に入るものでもなければ、日々、ビリビリと強く実感するようなものでもないのだろう。
 そして、「まあ、何となくそんな気がする」という「ハンパなやりがい」を手に入れるためには、一年や二年ではなくて、五年、一〇年と仕事を続けなければならない。

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか
香山リカ (著)
朝日新聞出版 (2012/12/13)

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか (朝日新書)

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  • 作者: 香山 リカ
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/02/27
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