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ランキングの弊害 [ものの見方、考え方]

  1980~90年代、多くの有名病院が死亡率の公表に同意した。それまでの病院の質が明らかにされたことはなく、患者に新たな視点をもたらす画期的な出来事として受け止められた。病院の使命を踏まえれば、治療能力を示すこれ以上の尺度があるだろうか。

 ところが死亡率には、入院患者のタイプ、検査の数、看護の程度などが複雑に絡み合っている。
どうしても死亡率を下げたければ、重症患者を受け入れなければよい。
だが、そんなことがまかり通っては、難病患者や重症患者を受け入れ、リスクの高い治療に挑む病院が減ってしまう。その結果、どの病院も質が向上しないままとなる。

 同様に、大学ランキングの類も近年、攻撃の的になっている。


ヤンミ・ムン (著), 北川 知子 (翻訳)
ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ダイヤモンド社 (2010/8/27)
 P29

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2010/08/27
  • メディア: 単行本

 

-4f6f3.jpg長谷寺1

P34
 ポジションマップや市場調査に限らず、どんな分析手法にも言えることだが、自社の競争力を測るという前向きな努力が、結果的には(住人注;差別化とは反対に、企業間の)均質化を促すムチになっていまう。
~中略~

 真の差別化は、均整の取れた状態から生じるものではない。むしろ、偏りから生まれる。
卓越性についても同じことが言える。脳外科医が、自分は小児整形外科やしわ取りの専門医であると言ったなら、あなたはうさんくさく思うだろう。
なぜなら、どこかが抜きん出ていれば、どこかにその代償があることを、直感的に理解しているからだ。

P40
 あなたが教師なら、まず、学生の能力を測定し、抽象的に表現することをやめよう。
学生たちにモノサシという権威に頼らずに、他から抜きん出ることの意味を考えさせよう。
やがてあなたは、学生たちが造り出す成果に目を見張るだろう。学生たち自身も驚くに違いない。  

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2010/08/27
  • メディア: 単行本

P65
2月3月になると「サンデー毎日」や「週刊朝日」などで、恒例の大学合格者高校別ランキングが賑々しく紙面を飾る。以前は東大合格者の氏名まで出されていた、最近は個人情報の絡みで出てこない。その代りにやたら多くの大学についてもランキングが出されている。
こういうことをしながら一方で学歴社会を批判する新聞社の鉄面皮ぶりには感服するが、それはまた別の話である。
~中略~
 しかし、だされた結果の数字からは、「本当に指導がうまい」のか、多くの進学校がそうであるように「もともといいのを選んでいる」だけなのかはわからない。後者を選択バイアス(selection buias)という。
「なんとかがんセンター」と名前のつく施設が加盟した全国がん(成人病)センター協議会(以下全がん協)という組織が、2007年から何度か施設ごとの各種ガン生存率を、病気に分けて治療成績として公表している。
全がん協のHPでは、施設間の比較はできないようになっているが、そんなもの、データを拾って表Aのような比較対照表にすることくらいは誰にでもできる。
ではその対照表で、生存率が上位の施設が治療が上手かというと、そうではない、というのはすでに説明した通りである。

P69
 要するに、多くのマスコミは、全がん協の「意図」を無視して、「ランキング」としてこのデータを報道したのである。ついでに書くと、上記の「相対生存率」について触れていたのは13記事中4記事のみであったが、そのすべてで、(専門家からみると)用語の解釈が間違っていたという。
 だから、素人の新聞記者たちは、小難しい統計学の方法論などはすっ飛ばすか誤解した上で、疫学的には「してはいけない」と断りつつ、やっていたことになる。
~中略~
 私は、病院間に診療レベルの差がないと言っているのではない。そんなもの、あるに決まっている。ただ、それは簡単に数字で表せるものではないし、簡単に出されてりう数字はあてにならないどころか医療レベル全体の低下を招く。
本稿であまり触れなかったが、「数字を良くする」最善の方法は、「危ない患者に手を出さない、下手に助けようと思わない」ことである。
里見清一

P79
 岡田氏(住人注;岡田正彦 医師)は、統計というものがいかに恣意的なものであるか、気づいてほしいと呼びかける。
「『検診が有効である』という結論に誘導したいがために、データの抽出方法を変えることはいくらでも可能です。たとえば10歳刻みで見ると特徴のないデータでも、5歳刻みで区切ると『検診が有効である』と言える年代区分があったとします。すると、その部分をクローズアップするわけです。
 このように、集まったデータをあらゆるフィルターにかけて見ていくわけですから、数十通りも試みるうちに、いつかは『○○の場合は健診が有効』という結論に結び付けられるでしょう。確かにこれはデータの”改ざん”でも”操作”でもありません。しかし、私はこの手法は『勝ち続けるまでギャンブルする』状態と同じで、結論を誘導する際の常とう手段だと思います」

P84
手術を受けた患者の5年生存率を比較した表(表4(住人注;略))である。よく見ると、上位の病院ほど「初期がん」の患者の割合が高くなっている。「進行がんよりも、軽い程度の治療で済む初期がんの患者を多く手術していれば、死亡率が低くなるのは当たり前の話でしょう。そこに意図的な患者の選別があったかどうか否かはわかりませんが、がんの進行具合という条件を加味せず、ひとまとめにしてデータをとりランキング化することは、ある意味乱暴だと言えます。
がん検診に限らず、あらゆる数字を疑ってみてください」
取材・文/山守麻衣(ライター)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 大型本

それでは、なにをあてにして病院を選べばよいのだ、何もないのではあんまりではないか、身も蓋もないとおっしゃるのであれば、その通りである。ただし、不完全ではあっても情報があった方がよいと称していい加減なことを書いて売るマスコミは、私には「何もない」末期患者に対して「何もしないよりマシ、ダメでもともと」で壺を売る霊感商法とダブって見える。
 病院間に診療レベルの差がないと言っているのではない。そんなまも、あるに決まっている。
ただ、それは簡単に数字で表わせるものではないし、簡単に出されている数字はあてにならないどころか医療レベル全体の低下を招くと申し上げているのである。良い指標があるならそれに越したことはない。

偽善の医療
里見 清一 (著)
新潮社 (2009/03)
P92

偽善の医療 (新潮新書)

偽善の医療 (新潮新書)

  • 作者: 里見 清一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03/01
  • メディア: 新書

 


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