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贈与と互酬の関係 [処世]

 この世間を読み解くうえで重要なキーワードは、贈与と互酬の関係である。(阿部謹也「近代化と世間」)。
つまり、贈られたら、贈り返すという贈答儀礼を通じて、互いの縁を結ぶ関係である。

江戸時代は次第に貨幣経済に進展しつつあったが、人間の結びつきにおいてはまだ贈与・互酬の関係が重要な意味をもち、この関係を通じて縁を結び、維持させていた。

福田 千鶴 (著)
江の生涯―徳川将軍家御台所の役割
中央公論新社 (2010/11)
P241

江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 (中公新書)

江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 (中公新書)

  • 作者: 福田 千鶴
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/11/01
  • メディア: 単行本

 

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P242
進物をうけるぐらいよいではないか、と軽く考えてはいけない。進物(義理)を受ければ、お返し(義理)をせねばならなくなるし、贈与・互酬の関係を認めればそこに私的な縁が生まれる。
縁は重いものであり、現世だけのことではないので、安易にはうけられない。これが世間の習いである。
~中略~

 公界における関係でしかない表向きの母と子の間では、日常での私的な縁を結ぶ必要はない、とする世間の考え方のもとでの接し方であった。将軍家御台所の江への贈答はその立場に相応のものを贈る必要があるため、江としても形だけの娘に負担をかけたくない、という思いも逆にあっただろう。

福田 千鶴 1961年(昭和36年)、福岡県に生まれる。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。博士(文学、九州大学)。専攻、日本近世政治史。東京都立大学人文学部助教授などを経て、九州産業大学国際文化学部教授

江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 (中公新書)

江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 (中公新書)

  • 作者: 福田 千鶴
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/11/01
  • メディア: 単行本

  助ける側に大きな努力が必要だったりすると、受け手はその好意にどう報いればいいか戸惑い、負担を感じる。
つまり、最初にあまり多くあたえすぎると、相手を面倒な立場に追い込んでしまう。相互性の法則にしたがえば、お返しはさらに大きなものになるからだ。
恩恵をほどこすときの動機も重要である。恩恵を受けた側が、自分が助けられたのは、能力がないと思われたからだと考えたり、相手の好意にはなにか裏があると考えたりして、自尊心を傷つけられることも多い。

その科学が成功を決める
リチャード ワイズマン (著), Richard Wiseman (原著), 木村 博江 (翻訳)
文藝春秋 (2012/9/4)
P84

その科学が成功を決める (文春文庫)

その科学が成功を決める (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/04
  • メディア: 文庫

 


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