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一夫多妻多妾 [雑学]

  妊娠の機会が限られたなかで、正室は正嗣を儲けなければならない、という重い役割を負わされていた。自ら生めればよいが、そうできないこともある。
侍妾を置くタイミングや庶出子を世嗣として認めることに合意するのも、重要な正室の役割だったろう。
役割というほどではない、と思うかもしれないが、正室にとっては自分が生んだ子が世嗣になるのを諦めるに等しい決断をするのだから、簡単なことではない。

 江はそうした葛藤を乗り越え、竹千代(家光)を正室所生の子として扱う決断を下した。
江は正室の役割をきっちりはたしたのである。

福田 千鶴 (著)
江の生涯―徳川将軍家御台所の役割
中央公論新社 (2010/11)
P235

-60b17.jpg龍蔵寺5

P236 
 侍妾制度は家の継承のためには必要であり、生母かどうかは重要ではなく、表向きは形式が整うことが大切だった。
~中略~
四男正之は侍妾制度のもとで、正当な手続きをとって生まれた子ではなかったため、表向きは秀忠の子として認めることができなかったという厳しい側面もある。
 それを承知したうえで、あえて言おう。それは表、すなわち男の世界の論理である。
奥の侍妾制度のもとで、生母と名のることを許されず、母とも呼ばれず、歴史に名を残すこともなく消えていった女性たちのことも考えてほしい。

P238
 このような、母として扱われることもなく死んでいった声なき多くの女性たちに支えられて、正室は正室としての役割―世嗣を儲けること―を成し遂げられたのである。
逆に、一夫多妻多妾という制度が当たり前であった時代にあって、正室(正妻)を支えてくれている侍妾に嫉妬心を抱くような度量の狭いことをしていては、正室の役割はつとまらなかっただろう。

福田 千鶴 1961年(昭和36年)、福岡県に生まれる。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。博士(文学、九州大学)。専攻、日本近世政治史。東京都立大学人文学部助教授などを経て、九州産業大学国際文化学部教授

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P212
 ヒトは遺伝学的にはチンパンジーといちばん近いのですが、社会の形態からみるとチンパンジーよりもゴリラに似ています。
 ヒトの社会は一夫多妻型が基本です。
ゴリラは1頭のオスが複数のメスを引き連れ、単雄群いわゆるハーレム型と呼ばれる集団をつくります。性関係も基本的に集団のメスはハーレムの長たるオスと半継続的な関係を結ぶので、夫婦とか家族に近いような集団といえます。まさにヒトと同じ一夫多妻型なのです。

対してチンパンジーは複数のオスとメスからなる群れをつくり、性関係は乱婚型です。
厳密にいうと、ヒトの社会関係とおいうのは一夫多妻型を基本としながら乱婚的な要素もあるので、ゴリラとチンパンジーの中間というのが正しいのですが・・・

P176
ヒトが一夫一婦制をとるようになったのは歴史的に見てもつい最近一般化してきた形態にすぎません。
現代においても、人口ではなく社会を単位としてみれば大多数が多妻型社会なのです。238社会での結婚様式を調べたマードックという人のデータによれば、81%がはっきりとした多妻型かそれに類する社会形態をとっています。
はっきりとした一夫一婦制は、残りの20%ほどにすぎず、それは先進国やキリスト教の影響を受けた社会に限られているのです。
~中略~

では多妻型には一体どんなメリットがあるのか?
一番のメリットは、年齢的に離れた兄弟姉妹がたくさんできる、ということです。同母の兄弟姉妹はもちろん、多妻型だと異母兄弟姉妹も一緒に暮らすことになる。
~中略~

こうした環境が、タテ社会にもヨコ社会にも適応できる幅広い社会性の芽を育てます。年齢や経験や力関係に基づいたヒエラルキーが生まれ、群れの秩序やルールが自然にできてくるのです。
 ヒトやその近縁種である類人猿の子どもたちは、長い間ずっと、このような多様な関係性にあふれた社会環境のなかで育ってきたのです。

平然と車内で化粧する脳
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)

 


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