十三徳 [倫理]
第一 節制 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。
第二 沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
第三 規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
第四 決断 なすべきことをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
第五 節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。
第六 勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
第七 誠実 偽りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に功正に保つべし。
第八 中庸 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
第十 清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
第十一 平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
第十二 純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためのみに行い、これに耽りて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。
第十三 謙譲 イエスおよびソクラテスに見習うべし。
フランクリン (著), 松本 慎一 (翻訳), 西川 正身 (翻訳)
フランクリン自伝
岩波書店 (1957/1/7)
P157
大山寺
P172
人間の本性だけを考えてみても、
「もろもろの悪行は禁じられているから有害なのではなく、有害だから禁じられている」のであり、従って来世の幸福を望むものはもとより、現世の幸福を望むもの者にとっても、徳を積むことは有利なのだ、
という教えであった。
また私は次のような事情から、つまり世には仕事を正直にやってくれるような人間を求めている裕福な商人、貴族、国家、あるいは諸侯などがいつもいるものだが、そんな正直者は甚だまれであるという事情から、正直と誠実とは、貧しい者が立身出世するのにもっとも役だつ徳である
~中略~
私がつくった徳目の表は最初は十二項目しかなかった。
ところが、クエーカー教徒の友人が親切に言ってくれたのだが、私は一般に高慢だと思われていて、その高慢なところが談話のさいにもたびたび出て来る。
何か議論するとなると、自分のほうが正しいというだけでは気がすまないで、おっかぶせるような、むしろ不遜と言ってもいい態度があるとのことで、その実例をいくつもあげたので、わたしもなるほどと思った。
そこで私は他の悪徳や愚考と同時に、できることならこれを直したいものだと考え、謙譲の徳を表に加え、その語に広い意味をもたせたのである。
>>> ベンジャミン・フランクリン
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