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日本の官僚システム [日本(人)]

 アスモロフ氏は熱物理学の専門家で、一九八六年チェルノブイリ原子力発電所の事故では現地対策本部に派遣され、事故による周辺地域の汚染と原子炉の除染、石棺建設などに携わった。
日本の原子力業界にも親友の多いアスモロフ氏はロシア側の助言と提案を携えて訪日しようとした。日本が未曾有の大震災と原発事故の中で国際協力を求めるものと考え、チェルノブイリ事故で学んだノウハウを日本側に提供する考えであった。
またその中で日本側から福島第一原発の状況について迅速な情報提供を得られると考えていた。しかし当初、日本側の入国許可は下りず出発は遅れ、さらに三日間の訪日中も東電の責任者との接触は許されなかった。
~中略~

 日本にいる間は、アスモロフ氏はマスメディアとの接触を制限され、残念ながら接触できなかったが、ロシアに戻り、私の電話取材に答えてくれた。
彼が一番問題としていたのは、日本の官僚システムによる意思決定の遅れである。
「日本の複雑で硬直的な官僚システムによって事故への対応が遅れてしまったのです。
 問題を検討する場所が現場から離れれば離れるほど政策決定が遅くなり、運営状況が悪化します。ロシア人にとっては五分で済んでしまうようなことでも、日本ではまず委員会を立ち上げて会合が必要でした。

原子炉は水が欲しい水が欲しいと三日間泣いていたのです。それなのに独自の官僚システムで意思決定が長引いている間に原発が燃えてしまったのです。

世界 2011年 05月号
岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P184

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 雑誌


-50871.jpg山口市 清水寺7


P185
 日本から情報が得られない中でアスモロフ氏らロシアが東京で接触したのはアメリカであった。
「私も東京で、アメリカの同僚と連絡をして、情報交換を約束した。アメリカのシミュレーションを我々とほぼ一緒だ。事情をより正確に予測できるように米ロのチームが情報を交換している」。

P187
ロシアは日本が求めるのであれば、核大国としてそしてチェルノブイリの事故を通じて多大な犠牲を払って得た核災害に対処するノウハウを教える用意はあった。
また国家に命令されなくても、アスモロフ氏やスマグーロフ氏は日本に喜んでノウハウを提供する考えであった。ロシア以外の国々もそうであっただろう。

しかし肝心の日本の側は、こうした国際支援については消極的であったように見える。

原発事故 ロシアはどう見たか──核兵器保有国の苛立ちと思惑
  石川一洋 (NHK解説委員)

 しかし、被災の状況によっては、住民の「安全のため」と称して、居住禁止区域が設定される可能性がある。
国策による地域・自治体抹殺は、足尾鉱毒事件の谷中村などを始め、これまでにもあった。
そして、文句を言う自治体を消滅させるのは、国・事業者・「専門家」にとって都合がよい。
行き先のない放射性廃棄物の処分場や新規の原子力施設立地にも好都合である。また、国は、被災自治体を合併させて、被災自治体の声を希釈化するかもしれない。

原発「核害」と立地自治体
  金井利之 (東京大学)

世界 2011年 06月号

岩波書店; 月刊版 (2011/5/7)
P89
 

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 雑誌



P78
 数年前に、池田君といっしょにラオスに虫採りに行ったとき、夜に酒を飲みながら、日本のロケット打ち上げが失敗続きなのはどうしてか、どうすれば失敗しないか、という話をしたのを覚えていない?
あのときの結論は、「開発担当者をそのロケットに乗せることにすればいいんだ」だったよね。
自分がそのロケットに乗るとなったら、担当者は必死になって取り組むでしょう。原発も同じです。
つまり、原子力安全・保安院や原子力安全委員会というのが原発の安全を監視・管理する立場であるとするならば、彼らは福島や新潟の原発のそばにすんでいなければダメだったんですよ。
現場で問題に接していなければ見えないものがたくさんあるんだから。それは懲罰的に住めということではありません。
~中略~

 考えてみたら、宇宙ロケットにしても、JALにしても、原子力発電にしても、国策として官庁が監督してやっているのはみんなどこか危なっかしい。もっとはっきり言えば、ほとんど失敗の連続です。
~中略~
役人というのは、現場の人間ではないから、頭で考えてものを決めるでしょう。ところが、問題は現場で起きるし、それを解決するのも現場なんですよ。

P84
養老 ~略、4月のはじめ頃に、いつの間にか二号機と作業用ピット付近の亀裂から汚染水が海に流出していると判明したことがあったでしょう。そのとき、あの水がどこからどのように漏れているかわからないようなことを言っていましたが、あれは、僕らでもすぐにぴんと来る話で、雨が降った後には地下浅層を水が流れるというのは虫屋の常識だよね。地面を現場にしている人ならみんな知っているはず。
ところが、そんなことも知らないような人が、判断をして、指示をだしていることがわかってしまった。
池田 そうなんだね。基本的なことさえ知らない人が最先端の科学技術を扱っている。

P89
養老 やっぱり昔の日本軍と同じだよね。
兵卒は一所懸命やったんだけど、指示する人間が駄目で、最悪なのは参謀本部だったというような。

P126
養老 ~略
 官僚は知恵者が多いから、どうにかして取り繕う理屈を考えていると思う。彼らがどういうかが興味深いところです。
だって、そこでわかるじゃないですか。どういう考え方をしているかが。

 世界の原発業界から見れば、「日本がこんな簡単なことで手を抜いたから、こういう事故になったんだ」という結論にしたいはずでしょう。
原発を今後も動かしていくためには、そういう結論にしたほうが絶対に都合がいいはずです。

ところが、それが日本では「誰が悪いのか」という話になってしまうでしょう。
すると、むしろそれは事実を糊塗してごまかす方向に作用するのではないか。ごまかさざるを得ないようなところに追い込まれていくのではないかという気がしているんですよ。
池田 あれが、防ぐことのできない、やむを得ない事故だったという話にすると、「そんな危険な原発はすべてやめましょう」という話のほうが当然強くなるからね。
養老 「安全だ」と言うためには、「これは単純なミスによる事故だ」「防ごうと思えば防げた事故だという結論にせざるを得ないんですよ。
国際的なパワーバランスもからんでくるから。  

ほんとうの復興
池田 清彦 (著), 養老 孟司 (著)
新潮社 (2011/06)

ほんとうの復興

ほんとうの復興

  • 作者: 池田 清彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本


 真珠湾攻撃から約半年後の昭和17年6月5日[現地時間]のミッドウェー海戦で日本は惨敗し、主力空母四隻と重巡洋艦一隻を失った。これがこの大戦における日本の運の尽きとなる。
 その惨憺たる結果の真相を知らされた者は少数であった。日本の不利な戦況は東条首相に必ずしも正確に伝えられるわけではなかった。その首相が天皇に報告するのであるから、天皇に本当の情報が届けられるはずがない。

語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」
竹田 恒泰 (著)
小学館 (2005/12)
P100

語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」

語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」

  • 作者: 竹田 恒泰
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本



 最近は官僚主導からの脱却が政治家の大命題とされている。選挙を経ていない官僚が政治家を操るなどというのはもってのほかだが、一方で、官僚組織は血税で運営されている日本最大のシンクタンクである。デモラルさせていいことはない。
その点、吉田は自らが官僚出身だったこともあって、彼らを自分の人脈に組み入れ、その能力を最大限に引き出した。 文庫版あとがき

吉田茂 ポピュリズムに背を向けて<下>
北 康利 (著)
講談社 (2012/11/15)
P225

吉田茂 ポピュリズムに背を向けて<下> (講談社文庫)

吉田茂 ポピュリズムに背を向けて<下> (講談社文庫)

  • 作者: 北 康利
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/11/15
  • メディア: 文庫





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