国際ゲームはすでに始まっている [国際社会]
アスモロフ氏やスマグーロフ氏の日本を助けたいという個人としての善意は真実であったとしても、国家としてのロシアはもう少し今回の事故を突き放して見ていただろう。
原子力発電を国際競争力のある戦略産業として育成しようというメドベージェフ・プーチン政権は、福島第一原発の事故の後も国内のみならず、海外への輸出戦略を止める気配はない。
~中略~
原子力発電の世界への輸出を進めつつ、原子力安全の優等生と見られていた非核国・日本での原発事故を理由に、実際に原子力発電を管理するのは米ロなどP5、そしてP5に許された一部の国に限ろうという核兵器国の思惑が隠されているのではないだろうか。
福島第一原発からの放射性物質はすでに全世界に広がっている。しかしこうした原子力事故でさえも自国の国益に利用しようとする国際ゲームはすでに始まっている。
原発事故 ロシアはどう見たか──核兵器保有国の苛立ちと思惑
石川一洋 (NHK解説委員)
世界 2011年 05月号
岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P187
P38
フランスは原子力発電で国の電気を賄う以上に、外国に電気を輸出して、お金を稼いでいます。サルコジ大統領が事故後早期に日本を訪れたのは、ただのお見舞いだけではなかったという見方があります。
原子力発電から離れよう
柳澤桂子 (生命科学者)
P120
菅首相も「トモダチ作戦に見せた米国の恩を永遠に忘れない」のい奇妙に感情移入したメッセージを寄せていたが、そんなナイーブな認識は愚かでさえある。
歴史を振りけるならば、そんな単純な話ではないことは明らかである。関東大震災(一九二三年)に際しても実は米国は日本に驚くほどの支援を寄せていた。
~中略~
国家が軍を動員して動くことは単純な善意や友愛だけではない、冷徹な外交判断が存在する。マッカーサーの離日直後に日本の国会が「マッカーサー感謝決議」をしようとしたかのごとき「愚かなる生真面目さ」を繰り返しているのである。
脳力のレッスン (110) 緊急編
震災考 ──指導者の役割と国際関係 寺島実郎
世界 2011年 06月号
岩波書店; 月刊版 (2011/5/7)
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