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近代主義者の覚悟 [ものの見方、考え方]

 一九二三年(大正一二年)の関東大震災から八七年、我々は当時と比べ物にならない等身大ではない技術に身を委ねて生きている。
超高速交通システムとしての新幹線にジェット旅客機、地上100mを超す超高層ビル、そして一基で100万KWの発電を可能にする原子力発電、どれも生身の人間が制御することもできないスピードと高さと効率性を実現している。
我々の生活はそのことを常態としているのである。

 我々はその実現を進歩であり発展だと考えてきた。そして私自身を含め、その便益を享受しているという意味において、紛れもなく我々は近代化を受容する近代主義者である。

脳力のレッスン 109
緊急編 東日本大震災の衝撃を受け止めて──近代主義者の覚悟
  寺島実郎

世界 2011年 05月号

岩波書店; 月刊版 (2011/4/8)
P77

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 雑誌


  -54fd4.jpg足立美術館3 

 本当は、自分自身の足で歩くこと、自分の身の丈の目線で生きること、汗をかいて炭を作り煖を取り煮炊きすることが健全なのである。
こういう事態に直面すると、いかに近代化の光と影を抱え込んでいるのか思い知らされる。だが近代主義者はジタバタしてはいけない。
そのシステムに身を委ねている限り、その破綻に対しても粛々と結末を共有するぐらいの覚悟は必要である。
そして、その一方で近代主義者は自分たちが依存するシステムに関して、最大限の努力をしてその安全と安定を図り続けねばならない。その鍵をにぎるのが「技術」である。
~中略~

 中国は現在(〇七年度実績)八〇〇万KWの原子力発電能力を二〇三〇年には六〇〇〇万KWにまで拡大する計画があり、北朝鮮のような危うい国も含め、韓国・台湾も原子力発電を積極推進しようとしている。
今回の事態を受け、近隣諸国も慎重になる可能性もあるが、仮に日本が全面撤退しても、近隣に多くの原発が存在する自体は想定しておかねばならない。
その際、日本が原子力の安全性を確立する技術をしっかりと蓄積し、誇り高い専門家を継続的に育成していなければ、責任ある発言も交渉力も確保できないのだ。
今回の福島の事態も、苦しみぬいた経験をしっかり総括し、近隣諸国と共有する基盤を作ることがアジアの安全のためにも大切だと思う。
~中略~

例えば、新幹線は、あの時東北・上越・東海道などの激震地を八八本が運行されていたが、少なくとも負傷者一人出さず止まった。
教訓と課題を噛み締めながら改善を積み上げる意志、これこそが近代主義者が失ってはならない「魂の機軸」ではないだろうか。

世界 2011年 05月号 [雑誌]

世界 2011年 05月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 雑誌



大人たちは「健全な経済があってこそ、環境問題の解決に投資できるのだ」と説明するだろう。
政府や企業はその行為が地球に少々負荷を与えるとしても、経済発展への努力を怠るわけにはいかないのだと。
しかしその「環境か経済か」の二者択一の考え方が、かつて公害や環境破壊を引き起こしてきた。

気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P84

気になる科学 (調べて、悩んで、考える)

気になる科学 (調べて、悩んで、考える)

  • 作者: 元村有希子
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: 単行本





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