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患者に優しい医療 [医療]

 患者、つまりペイシェントとは、耐える者、待つ者の意味である。
だから待つのはやむを得ないと、患者も病院も思っているらしい。しかし、度を過ぎた待たせ方は患者の人権にかかわる。
3時間待って三分の診療といわれるが、予約があったにもかかわらず一時間以上待たせられたら、私はその病院の信頼性を疑う。医者と喧嘩して帰ってしまったこともある。
~中略~

 近頃「患者さん」から「患者様」に呼び名は変わったが、耐え忍ぶ人、待つ人という点は変わらない。
終わった診療票を提出してから名前を呼ばれるまで、早くても三、四十分はかかる。
~中略~
患者に優しい医療は、名前に「様」をつければいいというものではない。

寡黙なる巨人
多田 富雄 (著), 養老 孟司 (著)
集英社 (2010/7/16)
P150

  -03488.jpg崇福山 安楽寺6

国津神

 患者様と言われた本人たちの中にも「バカにされている感じがする」と言う人もいて、患者様の旗色はよくない。~中略~
 粗末なベンチに何時間も待たされるのでは、患者様などともち上げられても、うれしくないのか。病院としては本当のサービスにはカネも人手もかかるから、とりあえず、タダのことばでサービスしようというのではないか、患者はひがみっぽいから、そう勘ぐる。

日本語の作法
外山 滋比古 (著)
新潮社 (2010/4/24)
P60

P9
「患者様」という奇妙な呼称はどこから出てきたか、についてはあまり一般に知られていないと思う。
これはそもそも医療者が横柄で傲慢であるということを反省し、医療はサービスということを再認識して百貨店などが顧客を「お客さま」と呼ぶのに倣ってそうしようと、「良心的な」病院が使い始めた習慣―ではないはずである。
まあどこにでも変わったことを考えてそれが良いことだと思い込む勘違い野郎はいるので、そういうお調子者がいたのかもしれないが、実際には二〇〇一年に厚生労働省が「患者の呼称は様を基本とすべし」という、実にくだらない通達を出したからである。
~中略~
 ところが驚嘆すべきことに、この間違いなく木っ端役人の思いつきで出てきた新語「患者さま」は、多くの病院で守られている。
わたしの病院でも掲示板はすべて患者さまになっている。ただし、この言葉を蛇蝎の如くに嫌う私は、若い医者をつかまえて、「絶対に使うな」と指導しまくっているが、それを咎めだてした人間は一人もいない。
 つまり、病院で、誰一人、患者さまを「様」だと心から思っている人間はいないのである。
したがって、あなたのことを「患者さま」と呼んでいる職員は、お上からの通達の手前、心にもない呼び方をしているのだと思って間違いない。
そういう奴が、あなたを「患者さん」と呼ぶ職員よりも、言葉が丁寧な分だけ気遣っていると、もし思うのなら、あなたは身体の病気で病院に来たかも知れないが、まず頭を良くした方がよい。
~中略~
 とはいえ、自らの信条はともかく、「患者は今や顧客として扱うべき」だとか、自ら率先して「患者さまと言え」と下に指導するような、医者の矜持や使命感をドブに捨てたような発言をする管理職が、私の身近にもいるのは事実である。
~中略~
 そもそも患者さまとはなんであるか。病気になったときに人は偉くなるはずはないので、「様」というのは、医療サービスの供給者である医療者が、顧客である患者に対して、「お客さま」として、「この病院を選んでくださって(そして診療をうけてくださって)ありがとう」という意味で使うことになる。
どうして「診療を受けてくださってありがとう」なのか?
医療行為で病気が良くなるのであれば、当然利益は患者側にあるので、ありがとうと言うのは患者側であろう。これが人間社会の常識であると、私は思う。
 そうでなくて、客に対しての「ありがとう」だというのならば、それは「お金を支払ってくれてありがとう」ということ以外にないだろうと思う。もしくは、潜在的には、うちの修行中の医者とか看護婦とかのトレーニングの材料になってくれてありがとう、というのもある。
ただ、この意味であなたが「患者さま」といわれているとしたら、背筋が寒くなりはしないか。
 お金への感謝であるならば、あなたが何らかの理由で診療費が払えなくなったら、あなたは「患者さま」ではない。どころか、(医療)サービス泥棒、ということになって、身ぐるみはがされて表に叩き出されることになっても文句は言えない。ここで文句を言う奴は「盗人猛々しい」と呼ばれる。
嘘だと思うのなら、高級ホテルに宿泊し、支払いの段になって「金がない」とやってみてくれ。それでもあなたを「お客さま」として丁重に取り扱うところがあれば、是非教えてほしい。私も泊りに行く。
 さて、それほど極端でなくても、顧客として「お金を払ってくれてありがとう」なのであれば、当然の帰結として、金を余計に払ってくれる患者がよい患者である。デパートであなたは一万円の買い物をする。そこへアラブの大富豪が現われて、百億円の買い物をしようとするときに、担当者がみなそちらへすっ飛んでいくのを見て、不快ではあろうが表立って苦情を言い立てるわけにはいくまい。
しかし、あなたが重病で苦しんでいるときに、医療者が高い金を払ってくれる美容整形の患者のところにばかり行って、あなたは大したことをしてくれないとしたら、それは不快を通り越して文字通り命がけの憤怒になるであろう。当然である。
~中略~
もし、患者の支払い能力で優先順位を決められたら、普通はとんでもないと思うであろう。
 しかしそんなことがあるのか。ある。アメリカでの大きな国際学会の会場で、突然、黒人の太った掃除のおばちゃんが倒れた。かけつけて救急処置をしようとしたのは、そこにいた日本人の出席者ばかりだった。圧倒的多数のアメリカ人医者は知らんぷり。
あとから日本の医者が聞かされたのは、そういう患者はだいたい支払い能力がないので、関わらないようにするのが普通だということであったそうだ。

P20
 あなたは、病気がよくなって退院するときに、「お大事に」と声をかけられたいか、それとも、「毎度ありがとうございます」と言われたいか。
後者は嫌だ、とおっしゃるのであれば、この「患者さま撲滅運動」に御賛同いただきたい。

偽善の医療
里見 清一(著)
新潮社 (2009/03)


保険制度下における医療消費は、一般の消費財やサービスの消費活動とまったく同じではない。社会保障制度のなかの保険財源という公共性を持った消費である。保険参加者のモラルハザードが広がると保険システムの破綻にもつながりかねない。
「自分さえよければ」「使わないと損」といったことはできるだけ避けなければならない。「患者サマ」という呼び方は、患者側に、こうしたモラルが要求されていることを忘れさせるのではないだろうか。患者の呼び方は「○○さん」がよいと思う。

患者満足度―コミュニケーションと受療行動のダイナミズム
前田 泉 (著), 徳田 茂二 (著)
日本評論社 (2012/3/2)
P153


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