病気の啓発運動 [社会]
最近、テレビを見ていると病気の啓発運動を目的としたテレビCMが増えているのに気がつく。
~中略~
最近日本でも病気の啓発活動を行うことによって、処方薬のマーケットを拡大しようとする動きが目立つようになってきた。グローバライゼーションの波は製薬業界にも及んでいる。
~中略~
「病気の押し売り」として欧米で批判されている代表的な疾患としては、小児の躁うつ病、男性型脱毛、性機能障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)、軽いコレステロール血症等がある。
冨高 辰一郎 (著)
なぜうつ病の人が増えたのか
幻冬舎ルネッサンス (2009/7/10)
P69
P105
さらに、一般市民向けの無料のうつ病講演会も積極的に開かれるようになった。学会主催とあっても、会場経費や講演料は製薬会社が負担する。
講演会の講師としては、うつ病にかかったことのある有名人や、うつ病の啓発活動に熱心な精神科医が多い。精神科医は講演の中で、うつ病は薬で治ることを強調し、早期の受診を勧めてくれる。講演の中では「最近発売されたSSRIは副作用が少なく、よく効く」とSSRIを勧めてくれることが多い。
~中略~
多国籍企業である外資系製薬会社は、欧米での経験から、うつ病における啓発活動の威力を十分知っていた。そして日本市場においても積極的に啓発活動を行い成功した。
しかし、うつ病の啓発活動の関係者は「啓発活動の影響で、うつ病受診者が増えている」とは決して口にしない。むしろ「社会のストレス増加のため、日本ではうつ病が増えている」と説明する。
そして「うつ病患者を救うには、社会がうつ病を理解することが必要である」と訴える。その結果、さらなるうつ病の啓発活動が行われ、うつ病患者が増えることになる。
アメリカのカプランという医師が「高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満」という四つが健康にもっとも悪いとして、これらを「死の四重奏」と名づけたのは一九八九年のことだ。
カプランによると、これら四つの生活習慣病こそが、心筋梗塞や脳梗塞といった死にいたる病を引き起こす動脈硬化の最大の原因なのだそうだ。
~中略~
しかし、「健康のためにはとにかく体重、食事をコントロールするべき」という考え方にも最近、疑問の声が上がっている。二〇〇九年の厚生労働省研究班の調査で、「最も短命なのは、四〇歳の時点で「やせ」に該当した人、「太りすぎ」の人より六、七歳早く死ぬ」という衝撃的な結果が明らかになったのだ。
宮城県内の住民約五万人に対して一二年間にわたって行われたこの追跡調査の結果では、四〇歳時点の平均余命は最も長かったのは「太りすぎ」の人で、いちばん短命な「やせ」の人は「肥満」の人に比べても五年ほど早く死ぬことがわかった。もちろん、「やせ」だけが短命の原因なのかどうかはこの調査だけでははっきりしないのだが、「とにかく体重さえ減らせば、健康になり長生きできる」という思い込みは正しくないことは明らかだといえる。
若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか
香山リカ (著)
朝日新聞出版 (2012/12/13)
P87
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