学習性無力感 [言葉]
40歳くらいになると、子ども時代のような強いポジティブ・イリュージョンはなくなります。
たとえば40歳を過ぎてから「将来プロ野球選手になろう」と思う人は(ゼロではないにせよ)さすがに少ないですよね。
~中略~
人は、長いことストレスを回避するのが難しい状況にさらされていると、「なにをやっても無駄だ」という無力感を経験から学びとってーすなわち「学習」してしまいーそこから逃れようとする努力さえ行わないようになってしまうのです。
これは心理学の世界で「学習性無力感」と呼ばれる有名な理論で、うつとも深く関係しているのではないかと考えられています。
~中略~
「学習性無力感」の理論を確立した心理学者、マーティン・セリグマンは、その後の研究から次のような結論に達します。
無力感を学習する人と無力感から立ち上がる人の違いは、その「原因」をどこに求めるかにある、と。
たとえば仕事で大きな失敗をしたとしましょう。このとき悲観的な人は、「自分の能力が足りないから失敗したんだ。能力の低さは変えられるものではないし、この先ずっといい仕事はできないだろう」と考え、無力感を学習してしまいます。
一方、楽天的な人は、「たままた失敗しただけで、自分のせいじゃない。そのうちうまくいくだろう」と考えるため、無力感を学習しません。
~中略~
もっとも、この楽観的な人の説明スタイルだけを見ると、独善的でかなり嫌な人間のように映るかもしれません。
しかし、我々はもともと楽観的な説明スタイルを好むようにできているし、多かれ少なかれ(無意識のうちに)実践しているのです。
~中略~
こうした解釈ができるかどうかは、結局、失敗なら失敗と言う事実をどれだけ広い視野で眺められるか、という問題に行き着きます。
視野が狭いと、失敗という事実から抜け出せず、ひたすら自分を責めて無力感の学習につながってしまいますよね。
菊池聡
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モーニング編集部 (編集), 朝日新聞社 (編集)
講談社 (2011/4/22)
P112
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