道元 [宗教]
道元ほど名利や愛欲を唾棄した人間はいない。一つの宗教を広めるには、権力者に近づくのが早道であろう。
最澄、空海はそれぞれ桓武天皇、及び嵯峨天皇の寵僧になり、法然すら後白河法皇のお召しを喜び、日蓮もまた鎌倉幕府の権力者に近づこうとした。
しかるに名門の出身で十分に権力者への手づるのあった道元が、彼の創始した曹洞宗の本山を京都・深草の興聖寺から越前志比庄の永平寺に移したのは、一つには叡山の圧迫ゆえであろうが、それ以上に彼には名利を憎む心が強く、中国の禅者の如く人里離れた深山に居をおこうとしたからであろう。
梅原猛、日本仏教をゆく
梅原 猛 (著)
朝日新聞社 (2004/7/16)
P146
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