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子をそだつ良法 [教育]

 小児は、少し空腹にさせ、少し冷たい思いをさせながら育てるのがいい。
 子供だけでなく、大人にもこうした苦労をさせるといい。子供に美味な食事をあたえ、上等な着衣を与え過保護にすると、のちのち大きな科厄になる。
俗人と婦人は、物事を知らず子を育てる方法を知らない。ただ、腹一杯おいしい食事を与え、厚着をさせ暖めすぎるので、子供はかならず多病になり短命になる。
貧しい家の子供の方が衣食とも乏しいので、かえって、病気にかかりにくく長命である。

養生訓 現代文
貝原 益軒 (著) , 森下 雅之 (翻訳)
原書房 (2002/05)
P227

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P207
およそ、人となれるものは、皆天地の徳をおけ、心に仁・義・礼・智・信の五性をむまれつきたれば、其性のままにしたがへば、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道、行はる。是人の、万物にすぐれてたうと(貴)き処なり。ここを以て、人は万物の霊、と云へるなるべし。
霊とは、万物にすぐれて明らかなる、智あるを云へり。されども、食にあき、衣をあたたかにき(着)、をり(居)所をやすくするのみにて、人倫のおしえなければ、人の道をしらず、禽獣(とりけだもの)にちかくして、万物の霊と云へるしるしなし。

いにしへの聖人、これをうれひ、師をたて、学び所をたてて、天下の人に、いとけなき時より、道ををしえ給ひしかば、人の道たちて、禽獣にちかき事をまぬがる。
~中略~
ここを以(て)、人となる者は、必(ず)聖人の道を、学ばずんばあるべからず。其おしえは、予(あらかじめ)するを先とす。
予とは、かねてよりという意(こころ)。小児の、いまだ悪にうつらざる先に、かねて、はやくをしゆるを云。はやくをしえずして、あしき事にそ(染)みならひて後は、おしえても、善にうつらず。いましめても、悪やめがたし。
~中略~
 富貴の家には、よき人をゑらびて、早く其子につくべし。あしき人に、なれそむべからず。貧家の子も、はやくよき友にまじらはらしめ、あしき事にならはしむべからず。凡(そ)小児ははやくおしゆると、左右の人をゑらぶと、是、古人の子をそだつ良法なり。必(ず)是を法とすべし。

P214
 凡(そ)小児のおしえ(教)は、はやくすべし。しかるに、凡俗の知なき人は、小児をはやくおしゆれば、気くじけてあしく、只、其心にまかせてをくべし、後に知恵出くれば、ひとりよくなるという。
是必(ず)おろかなる人のいふ事なり。此言(ことば)大なる妨げなり。

P220
 四民ともに、其子のいとけなきより、父兄・君長につかふる礼儀、作法をおしえ、聖経をよましめ、仁義の道理を、やうやくさとしむべし。
~中略~
学問は専一ならざれば、すすみがたし。芸は、学問をつとめて、そのいとま(暇)ある時の余事なり。学問と芸術を、同じたぐひにおもへる人あり。
本末軽重をしらず。おろかなり、と云べし。学問は本なり、芸能は末なり。本はおもくして、末はかろし。本末を同じくしべからず。

和俗童子訓 巻之一 
総論 上

P273
世に上智と下愚とはまれなり。上智は、をしえずしてよし、下愚はをしえても改めがたしといへども、悪を制すれば、面(おもて)は改まる。
世に多きは中人なり。中人の性は、教ゆれば善人となり、をしえざれば不善人となる。故にをしえなくんばあるべからず。

和俗童子訓 巻之二 
総論 下

養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)

 「君子は子を易(か)えて教える」という礼があって、身分ある人は自分の子を直接教えないたてまえであった。 それは子を愛する愛情が、かえって教育の妨げとなることを恐れたからであろう。~後略 李氏篇

                 論語
           孔子 (著), 貝塚 茂樹
           中央公論新社 (1973/07)
           P480


子どもにはできれば不愉快な経験を避けて通ってほしいと親が願うのは美しいことですし、その願いは子どもに対する愛情と気配りから生じたものです。
 しかしこうしたことを望む親たちが見落としてしまいがちなことがあります。
 それは困難から子どもたちを守ることは、短期間であれば子どもたちの人生をより快適にできても、結果的には、自信や失敗から回復する力、人生の意義を知ること、そして対人関係に関する大切なスキルを身につける機会を、子どもたちから奪っているかもしれないということです。
 健全な発達と成長のためにには、子どもたち自らが失敗に対処し、困難な時期を切り抜け、つらい感情を経験することが必要なのです。

ハーバードの人生を変える授業
タル・ベン・シャハー(著), 成瀬 まゆみ (翻訳)
大和書房 (2015/1/10)
P118


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