養生の要訣 [養生]
益軒によると人間の寿命は百歳を定命とし、六十歳から上を長生きの部にかぞえている。ところが世の中には、五十歳にもならないで死ぬ人も多いが、それはそう生まれついた命ではなく、「十人に九人は、皆みづからそこなへる」もので、寿命を全うせずに夭死(わかじに)したもので、日ごろの養生を無視したためである、と見ている。
養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P284
宮島
P287
「身をたもち、生を養ふに、一字の至れる要訣あり。これを行へば、生命長くたもちて病なし」。と大きくでておいて、
「畏(おそ)るの字これなり。畏るるとは身を守る心法なり。」(巻第一、6丁目裏)
と、一字だけを大映しに浮きあがらせた短い一句だけを示している。
~中略~
言葉をかえていうと、慎む、自己検討する、ということである。
P291
この信念は、飲食だけについてでなく、人生の生きかた全般について「控え目にする」ことを原則にした益軒が「養生の要訣一つあり。要訣は少(しょう・・・・すくない)の一字なり。少とは万(よろず)の事、皆少なくして多くせざるをいう」と述べている養生の原則を、飲食にあてはめたと考えてよいであろう。
解説
ところで、この本は、実は中国で編纂された医学書を下敷きにしている。ただし益軒なりに、取捨選択がなされている。
~中略~
さて、当の益軒先生、正徳四年(一七一四)八月二十七日、享年八十五で亡くなった。
ちなみに益軒先生は二十歳も年下の女房がいて、嫉妬深く、益軒が外出するとき、遊廓へ行くのではないかと疑い、どこへでもついて来るという激しさ。それで八十五までとは、接して洩らさず、長生きしたんだな。
この国のことば
半藤 一利 (著)
平凡社 (2002/04)
P163
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