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鵯越の「坂落し」はありえん [雑学]

 比較的坂道に強いとされる在来馬にあっても、険阻な山坂道には弱く、そのような街道での運搬は近代にいたるまで牛が使用されていた事実を知るとき、むしろ現実には ありえないことだからこそ、人々を魅了する英雄伝説として広まったと理解されよう。
そもそも同時代史料によれば、義経の軍勢は山陽道を東進して一の谷を攻撃しており、 山方の鵯越は通っていないのである。(「玉葉」寿永三年二月八日条)。

源平合戦の虚像を剥ぐ 治承・寿永内乱史研究
川合 康 (著)
講談社 (2010/4/12)
P16

源平合戦の虚像を剥ぐ 治承・寿永内乱史研究 (講談社学術文庫)

源平合戦の虚像を剥ぐ 治承・寿永内乱史研究 (講談社学術文庫)

  • 作者: 川合康
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/01/21
  • メディア: Kindle版

 

IMG_3884 (Small).JPG高松

P50
 このデータから、中世の軍馬の多くが日本の在来種の中型馬、今日の木曽馬・御崎馬・北海道和種に相当する大きさであり、なかには一二一センチメートル以下のトカラ 馬のような小型馬も含まれていたことが、明らかになったのである。
~中略~

それにしてもこれらを現在の馬の分類にあてはめると、すべてが一四ハンズ二インチ(一四八センチメートル)以下の馬、つまり今日でいう「ポニー」に相当してしまう。

P60
 たとえば、サラブレッドの疾走が時速六〇キロメートルを超えるのにたいして、木曽馬は時速四〇キロメートルにおよばないのである(末崎真澄前掲論文)。
~中略~
 ふつう、駈歩(かけあし)は分速で約三〇〇メートルであるが、実験馬(住人注;中世軍馬に近いものに45キログラムの砂袋+馬術部員))は分速一五〇メートルにしか達せ ず、乗馬して十分後には大きく首をふりやっと走っているという状態になって、実験を終了している。

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