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日本語ブーム [言葉]

 若い世代の人間は、日本語を守ろう、という主旨の日本語本なんか読みやしないのだ。なぜなら彼らこそが、日本語の破壊者だからである。二十一世紀を迎えて、日本語はものすごく大きく崩れ去ろうとしているのかもしれない。
 だからそのことの予感におののく年配世代が、何かにすがりつくように日本語を求めているのだ。

 日本語は正しくはこういうものだったんだよなあ、日本語はこんな美しさをもっていたんだ、日本語の成り立ちはこうだったんだ、というようなことを、日本語がいよいよ消えゆこうとしている今、センチメンタルに振り返っているのが、今の日本語ブームだと言えなくもないのである。

はじめてわかる国語
清水 義範 (著) , 西原 理恵子 (イラスト)
講談社 (2002/12)
P300

DSC_6001 (Small).JPG高松

 衣食足りて礼節を知る、というが、ことばは礼節のひとつである。ことばを大切にするのは文化のはじまりで、ことばへの関心が高いのは豊かに成熟した社会である。
ただ働くのに忙しいというのではことばを顧みるゆとりがない。
 ことばを文化の媒体であると認める人たちはことばによって人間を判断、評価するようになる、この点で、”文は人なり”ということばを生んだフランスが世界に先んじていたとしてよかろう。イギリスもまけてはいない。上品でていねいなことばを遣う人が紳士であり淑女であるとした。
 わが国はもともとことばを大事にしてきた。古くから、言霊のさきわう国であるのを誇りとした。昔から詩歌、文芸が栄え、他に比を見ない精緻な敬語法をつくり上げた。
 戦争に敗れて、みじめな生活を余儀なくされている間に、さしものことばの伝統も大きく崩れ、乱れなくてはならなかった。しかしそういう時代が長く続いたわけではない。人びとの生活が平常をとり戻すにつれて、ことばを気にする風潮が高まる。ことばを大切にしよう、美しい日本語を育てようという声が広まって、日本語ブームだといわれた。四十年ほど前のことである。

日本語の作法
外山 滋比古 (著)
新潮社 (2010/4/24)
P178


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