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煩に耐える [教育]

  凡(そ)子弟わかきともがら、あしき友にまじはりて、心うつりゆけば、酒色にふけり、淫楽をこのみ、放逸にながれ、淫行をおこなひ、一かたに悪しき道におもむきて、よき事をこのまず。
孝弟を行ひ、家業につとめ、書をよみ、芸術を習ふ事をきらひ、少のつとめもむつかしがりて、かしら(頭)いたく、気なやむなどいひ、よろづのつとむべきわざをば、皆気つまるとてつとめず。
父母は愛におぼれて、只、其気ずい(隋)にまかせて、放逸をゆるしぬれば、いよいよ其心ほしいままになりて、ならひて性となりぬれば、よき事をきらひ、むつかしがりて、気つまり病をこるといひてつとめず。
なかにも書をよむ事をふかくきらふ。

凡(そ)気のつまるといふ事、皆よき事をきらひ、むつかしく思へるきずい(気隋)よりおこれるやまひ(病)なり。
わがすきこのめる事には、ひねもす、よもすがら、心をつくし、力を用いても気つまらず、囲碁をこのむもの、夜をうちあかしても、気つまらざるを以(て)しるべし。
~中略~

凡(そ)学問して、をやに孝し、君に忠し、家業をつとめ、身をたて、道を行なひ、よろずの功業をなすも、皆むつかしき事をきらはず、苦労をこらへて、其わざを、よくつとむるにより成就せり。
むつかしき事、しげきわざに、心おだやかにくるしまずして、一すぢに、しづかになしもてゆけば、後は其事になれて、おもしろくなり、心くるしむる事もなくて、其事つゐに成就す。又むつかしとて、事をきらへば、心から事をくるしみて、つとむべき事をむづかしとするは、心のひが事なり。
心のひが事をば、そのままを(置)きて、事の多きをきらふは、あやまり也。

和俗童子訓 巻之二 
総論 下

養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P228

TS3E0325 (Small).JPG到津の森公園


タグ:貝原 益軒
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