フェアな社会 [社会]
ザッカー(住人注;リン・ザッカー)の研究によれば、信頼社会の典型と思われがちなアメリカも、当初は安心社会としてスタートしていたといいます。
考えてみれば、それは当たり前のことで、そもそもアメリカはヨーロッパ各地からの移民によって作られた、いわば寄り合い所帯の国です。社会そのものが伝統が浅いわけですから、当初はイタリア移民ならイタリア移民、ユダヤ人ならユダヤ人といった具合に、同じ出身地、同じ宗教を持った人たちが助け合うことからアメリカ社会が始まったというのは、当然の成り行きと言えるでしょう。
つまり、初期のアメリカは人種のモザイクならぬ、安心社会のモザイクによって出来ていた国家だったというわけなのでしょう。
ところが、こうした「安心の保証」のメカニズムも、移民の大量移入、さらには急速な工業化などの社会変動によって、一九世紀後半あたりから失われていきます。
つかり、今の日本と似たような状況が起きていたというわけなのですが、ちょうどこの時期にアメリカでは公平で効率的な社会制度の整備が急速に進んだのが、アメリカにとって幸いしたとザッカーは指摘しています。
細かな話はここでは省略しますが、アメリカ人が誇りにする「フェアな社会」の基本は実はこの時期に作られたものであって、そしてこのときに作られた諸制度こそが、のちのアメリカの繁栄をもたらすものだったのだとザッカーは言います。
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
山岸 俊男 (著)
集英社インターナショナル (2008/2/26)
P222
日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点 (集英社インターナショナル)
- 作者: 山岸俊男
- 出版社/メーカー: 集英社
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