文明とは [哲学]
一一 文明とは道の普(あまね)く行はるるを賛称せる言にして、宮室の荘厳、衣服の美麗、外観の浮華を言ふには非ず。
世人の唱ふる所、何が文明やら、何が野蛮やら些(ち)とも分らぬぞ。予嘗(かつ)て或人(あるひと)と議論せしこと有り、
「西洋は野蛮ぢや」と云ひしかば、「否な文明ぞ」と争ふ。
「否な否野蛮ぢや」と畳みかけしに、「何とて夫れ程に申すにや」と推せしゆゑ、「実に文明ならば、未開の国に対しなば、慈愛を本とし、懇懇説諭して開明に導く可きに、左は無くして未開蒙昧の国に対する程むごく残忍の事を致し己を利するは野蛮ぢや」
と申せしかば、其の人口を莟(つぼ)めて言無かりきとて笑はれける。
西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想
西郷 隆盛 (著), 猪飼 隆明 (翻訳)
角川学芸出版 (2007/04)
P41
西郷隆盛「南洲翁遺訓」―ビキナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)
- 作者: 西郷 隆盛
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 文庫
P47
「欧米化」にもいろいろあります。自動車が普及して運動量が減ったことや、コーラのような清涼飲料水が飲まれるようになったことは、間違いなく糖尿病増加の原因です。一方で、肉を多く食べるようになったことなどは関係ありません。
~中略~
いまでは、むしろ貧困層に糖尿病が増えています。
アメリカのスーパーマーケットに行くと、巨大なピザが10枚くらいセットになったものが売られています。栄養バランスは良くないのですが、安くて手軽でお腹がいっぱいになるために人気です。
そして、そういうみのを常食している人たちに、肥満も糖尿病も、他の怖い病気も増えているのです。
これは世界的傾向で、日本でも同様の流れになりつつあります。
P63
日本人の糖尿病に関する記録で、最も古いのが平安時代の藤原道長の日記です。道長は喉の渇きや視力の低下に悩んだようで、明らかに糖尿病であったと思われます。
これは道長が糖質をたくさん口にできる特権階級だったからであり、一般人には糖尿病などありませんでした。
日本で一般人が糖尿病にかかるようになるのは、戦後20年くらい過ぎてからのことです。
経済が急成長して、多くの人たちがお米や麺類、砂糖の入ったお菓子や飲み物を好きなだけ口にできるようになり、糖尿病も増えていきます。
そして、現代ほど30代や40代の男性に肥満者が多い時代はありません。
戦後70年といえば、長いように感じるかもしれません。しかし、1万2000年続いた縄文時代と比べたら、ほんの一瞬。その間に私たちは、なにかとんでもないことをしでかしてしまったのかもしれません。
いま「生活習慣病」と呼ばれる病気は、明らかに「文明病」です。生活習慣には、運動や睡眠などさまざまな要素がありますが、食生活の変化が私たち現代人を苦しめる病気をつくりだしたのです。
肥満、糖尿病、高血圧、がん、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、脂質異常、うつ、ぜんそく、アレルギー、アトピー、潰瘍性大腸症候群・・・・・これらはすべて「文明的な食事によって生まれたと言っていいでしょう。
医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68
牧田 善二 (著)
ダイヤモンド社 (2017/9/22)
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