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日本人とコメ [日本(人)]

P82
大前(住人注;大前 研一)
 日本の資本でオーストラリアの鉄鉱石に山を買う。そして二十年間、安定供給してもらうということができます。同じやり方で水田を経営したらいい。そうすると、土地を輸入したことになる。日本という国の中では必ずしも土地を水田に使う必要がない、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチン、中国、アメリカで営農をすればいい。
~中略~
鉄鉱石の山をブラジルで買って安心しているのに、なぜ海外の自分の田んぼでつくったものを自分のものと思わないかということです。
 しかし、米も一つの財にすぎません。世界というのは、国境とか、政府を完全に超えた形で、経済的にアメーバみたいな実態になっていると思うんです。

P84
司馬
 日本人のお米に対する感情は、一種の神国思想なんです。弥生式農耕が根づいたときに、神々が生まれて多くの宗教儀礼が生まれたものですから。
大前 でも、アメリカ人にとって、ヘンリー・フォードがつくった自動車はアメリカの文明そのものです。日本人の米と同等に神聖なものなんですね。それを平気で三〇パーセントもとっちゃって、デトロイトが悪いの、経営が怠慢だのと処理してしまう日本人の神経が一方でありながら、米になると待ってくださいというのは、どうなんでしょう。

対談集 日本人への遺言
司馬 遼太郎 (著)
朝日新聞社 (1999/01)

対談集 日本人への遺言 (朝日文庫)

対談集 日本人への遺言 (朝日文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1999/01/01
  • メディア: 文庫


DSC_6243 (Small).JPG臼杵石仏

 江戸期の支配経済は、米を基礎としている。このため米が食物であることにとどまらず、稲作が核になって宗教、哲学を生み、暮らしの文化をつくり、ついには社会的差別まで生んだ。
農が士農工商の次位に置かれたのは、歴史的には士は農から派生したということもあるが、それ以上に大きな理由は米が貨幣同様のものであり、それを基礎として幕藩が成立しているため、それを生む者として農民は、形式上、あるいは功利的理由から、尊重されるかたちがとられていたのである。
 おなじ農でも米百姓に優位があたえられ、かれらは非水田地帯の畑百姓を差別したが、このことはいまはわすれられているようでもある。米百姓も畑百姓も、職人を身分的に軽んじた。村に1戸は鍛冶があり、一戸は大工、さらには左官が住んでいたものであったが、それらは百姓たちから一段低く見られた。米をつくって租税をおさめるということをしないからである。

街道をゆく (12)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1983/03)
P60

街道をゆく (12) (朝日文芸文庫 (し1-13))

街道をゆく (12) (朝日文芸文庫 (し1-13))

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1983/03/01
  • メディア: 文庫


大和政権というのは要するに水稲農業を奨励し普及し、それによって権力と富を得、秩序の安定を得ようとするせいけんということがいえるであろう。
ユダヤ教やキリスト教、回教のような巨大な形而上的体系でもって民を治めようとしたのではなく、要するに稲作農業という形而下的なものを普及することによって権力を充実させ拡大させた政権で、上代における征服事業というのも、稲作普及軍の一面をもち、山野を駆けまわる非稲作人に打撃を打撃をあたえて「化外」のかれらが水田に定着すればそれでよしとした。
極端にいえば、徳に化(か)していることは定着して稲作をしていることであり、徳に化していない(化外)ということは、稲作をせずにけものを追ったり、魚介を獲ったりしているということであったにちがいない。

街道をゆく〈9〉信州佐久平みち
司馬 遼太郎 (著)
朝日新聞社 (1979/02)
P14

P24
日本農業は、頻発する自然災害に加えて、高温多湿ゆえに、雑草・害虫との闘いの歴史を刻んできた。
日本農業の代表である稲作についてみてみよう。アメリカでも、多種多様な日本米が広く栽培されているが、種籾を航空散播する。
日本で、そのようなことでもしようものなら、高温多湿ゆえによく生えてくる雑草にやられてヒドイ減収になるのが落ちである。
そこで、先ず、雑草にやられない大きさになるまで苗を育苗施設で育てたあとに、田植え機を使って田圃に移植する。その後も、雑草・害虫にやられないように、農薬をフンダンに散布する。したがって、先ず育苗施設、田植機、農薬のための無駄な経費がかかる上に、これらの作業のための多大な時間と労力を要する。
 以上にも増して、日本農業はいかんともし難い、根本的に不利な環境に置かれている。農業は、炭酸同化作用を活用する産業である。つまり、植物の葉に含まれる葉緑素が地下から吸収した水と空気中から吸収した炭酸ガスに、光のエネルギー作用することにより、人間の食物になる炭水化物が生成される自然の摂理を利用する産業である。~中略~
したがって、太陽光線をどれだけ多量に受け取ることができるかが農業生産における最も重要な鍵である。しかし、日本は、多湿つまり雨が多く厚い曇り空に阻まれて、年間の日照率は、欧米の半分程度で、炭酸同化作用が起こり難いのが厳然たる事実である。

P26
農業をこれ以上切り捨てることは取り返しのつかない負の財産を後世に残すことになる。可能な限り、工業と農業を共生させ、バランスの取れた産業構造に立脚した健全な国家への方向転換が望まれる。
 そのためには、先ずは、日本は欧米に比べて農業に向いていないことを率直に認める意識改革が望まれる。また、それだけに、欧米に増して、強力な農業支援が必要であることへの国民の理解を求めることが不可欠である。

自然科学の視点から考える 日本民俗学
橋口 公一 (著)
幻冬舎 (2017/4/20)


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