無常の世だから共感で生きる [宗教]
私たちはこの世に生まれてきた以上、必ず老い、病み、やがて死なねばならない無常の存在です。たえず変化していくこの身に、我と呼ばれるような永遠に変わらない実体がないのは、当然のことというべきでしょう。
しかし、そうだからといって、病の床に伏す人に、ただこの身は無常・無我であって、はかないものであると説くのではなく、むしろわが身の無常・無我であることを人々に示して、いまこのときを精一杯生きるように積極的に教え導け、と説かれなければならない、とされるのです。
維摩の言葉の中でもう一つ重要なものは、「自分の病気から推して、他人の病気をおもいやり、その苦悩を知る」ということです。
維摩の利他行の基本は、苦しみ悩む人々と同じ立場に立つこと・その人々と共感することであり、それが大悲と呼ばれるということはすでにお話ししたとおりです。
維摩経をよむ―日本人に愛されつづけた智慧の経典
菅沼 晃 (著)
日本放送出版協会 (1999/06)
P130
維摩経をよむ―日本人に愛されつづけた智慧の経典 (NHKライブラリー)
- 作者: 菅沼 晃
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2021/01/08
- メディア: 単行本
~中略~
自分の病気は過去の悪業の報いだなどと思って、いたずらに憂い、悩むのではなく、むしろ他人の病気に共感できる能力によって、積極的な努力をつづけ、病気を治療しなければならないと説くべきだ。
そして、自分自身にもとよりそなわっている治癒力を確信し、正しい節制につとめて浄らかな生活をし、自分自身が「医王」となって病気を治し、さらに他人の病気をも治そうとする意気ごみをもつようすすめるべきである、という維摩のことばは、いまでも新鮮な響きをもっています。
維摩経をよむ―日本人に愛されつづけた智慧の経典 (NHKライブラリー)
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