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自由ということ [哲学]

 ここで自由ということが、近代の政治史の上でいったい何を意味したかを、簡単に振り返って考えてみることにしよう。
まずアメリカ合衆国の独立宣言では、あらゆる人びとが幸福を追求する権利を要求した。
それが、フランス革命では、これを自由というたった一語に結晶させてしまった。
そして、それにつけくわえられた平等というのは、要するに一種の管理社会の概念であり、博愛というのは自己抑制(セルフ・コントロール)のことにほかならない。
なかでも、この最後のものは、デモクラシーが有効に機能するための必須の条件だが、およそこれぐらいむずかしいものはなかろう。なぜならば、これは平凡な市民に対して、ぎりぎりの能力の放出を要求するからだ。
が、ともかくも、こうしてデモクラシーの哲学の最初の一巡が終わる。

 そして一九世紀の中頃から始まるのが、第二の段階である。これは民族という地域的なグループが集団として国家としての自由を追求しようとする働きであり、しかも同時にその集団の内部における社会的な平等を、それぞれに独自な方法を通じて実現しようとするものにほかならない。

地政学入門―外交戦略の政治学
曽村 保信 (著)
中央公論社 (1984/01)
P71

地政学入門 改版 - 外交戦略の政治学 (中公新書)

地政学入門 改版 - 外交戦略の政治学 (中公新書)

  • 作者: 曽村 保信
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/07/19
  • メディア: 新書

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菅尾石仏

P138
すべての人間が、自由を得るや、その欠点を発揮する。強い者は度を越え、弱い者は怠ける。
(「格言と反省」から)

P138
自由というものは妙なものだ。だれでもみずから足るを知って暮すことを心得たら、容易に満足する。用いることのできない過度の自由がなんの役に立とう。
(エッカーマン「ゲーテとの対話」一八二七年一月一八日、から)

P151
立法者にしろ革命家にしろ、平等と自由とを同時に約束する者は、空想家にあらずんば山師だ。
(「格言と反省」から)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

  • 作者: ゲーテ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1952/06/27
  • メディア: 文庫

私どもは、団体生活という一つの束縛、一つの規律を通して、不自由を不自由と見ない訓練を絶えず積んでいるわけです。
また、自由とか不自由とかいうことは、自我の拡張によって起こる問題ですから、自分の心さえほんとうに殺し尽くせば、世に自由と不自由という隔てはなくなります。さらに言えば、自由も不自由も、それは実に主観的なものです。

なぜ、いま禅なのか―「足る」を知れ!
立花 大亀 (著)
里文出版 (2011/3/15)
P99

なぜ、いま禅なのか―「足る」を知れ! (名著復活シリーズ)

なぜ、いま禅なのか―「足る」を知れ! (名著復活シリーズ)

  • 作者: 立花 大亀
  • 出版社/メーカー: 里文出版
  • 発売日: 2011/03/15
  • メディア: 単行本

 

わたしたちの多くは自分が本質的に自由だと考え、祖先にはそのような自由はなかったと思っている。
一九世紀に伝統的な世界から離脱した西洋人は、その後、世界をどう編成するか自分で決定する力をついに手に入れた。人々は二世紀を費やして、競合するさまざまな政治社会思想に取り組んだ。
社会主義、ファシズム、共産主義、民主資本主義などだ。 そして、一つを残してほかの思想の威信が失墜したあと、ついに「歴史の終わり」にたどり着いた。 一九八九年にベルリンの壁が崩壊するとともに、世界に秩序をもたらす正しい方法、すなわち人類の繁栄と成功を実現するのにもっともふさわしい方法として、新自由主義が勝利をおさめたかに見えた。
 しかし、だとすれば、先進世界で急増している不満や自己中心主義や不安をどう考えればいいのだろう。わたしたちは勤勉が成功につながると教わるが、それでも、貧富の格差は急速に拡大し、社会的流動性は低下している。
生活はありとあらゆる夢のようなすばらしい技術によって快適になり、医学はかつてない進歩を遂げたにもかかわらず、わたしたちの大いなる楽観主義は影をひそめた。もはや、世界を構築してきた自分たちのやり方に以前ほど自信がもてなくなっている。 

ハーバードの人生が変わる東洋哲学──悩めるエリートを熱狂させた超人気講義
マイケル・ピュエット (著), クリスティーン・グロス=ロー (著), 熊谷淳子 (翻訳)
早川書房 (2016/4/22)
P23


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