接物宜従厚 [処世]
物に接するよろしく厚きに従うべしというは黄山谷の句である。人は心を存するすべからく温なるべきである。
~中略~
性癖は如何とも為し難いにせよ、人はなるべく「やわらかみ」と「あたたかみ」とを有したいものである。
仮にも助長の作用を為して剋殺の作用を為したくないものである。
努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P115
~中略~
他人の宗教を奉ぜんとするに会えばこれを嘲笑するは、科学を悦ぶものの免れざるところであり、他人の科学を尊信するを見ればこれを罵倒するは、宗教を悦ぶものの免れざるところである。
しかし、人の性情は多種であり、人の境遇は多様である。自己の是とするところのみを是とせば、天下は是ならざるものの多きに堪えざらんとするするのである。
故にいやしくも不良でなく兇悪でなく狂妄でない限りは、人の思想や言説や行為に対しては、いやしくも剋殺的でなく助長的であって然るべきである。
(明治四十四年二月)
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