おにぎり [雑学]
男はどうだか知らないけれど女なら、自分の過去にあるおにぎりの影をたどると、誰しも大抵ちょっとした一代記の材料になるのではないかと思う。
にぎにぎ頂戴、とねだった幼い日から学校の運動会遠足、勤め先のグループでするハイキング、若い母として初子に握ってやるおむすび、それにいまはおおかたの人が戦争のおむすびの味を経験している筈だし、東京人には関東地震のときの想い出もあり、その上運の悪い人なら貰い火のまるやけで思いがけない塩むすびを食べたこともあろうというものだ。
おにぎりで女一代記はわけなく書けそうである。~後略~
(一九五六年 五十二歳)
幸田 文 (著) , 青木 玉 (編集)
平凡社 (2009/3/5)
P35 藤松小学校
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