解像力 [見仏]
使ったのは国産のアートビューという4×5判カメラである。つまり横4インチ縦5インチのフィルムを使う大型カメラである。
ライカM3とかニコンのような35ミリカメラは、もっぱらスナップ用で、万やむをえない場合のほか仏像や風景には絶対に使わない。
理由は簡単だ。フィルムサイズが大きいほど、解像力が強いからだ。
もちえろん35ミリ判でもらくらく全紙判とか全紙倍判に引伸しできる。だから、襖半分ほどの大きさの見事な引伸し写真を見れば、それよりも小さいB5判の雑誌B4判の写真集に印刷するのに、何の問題もないように見える。
しかしぼくの長い経験では、ストレートの引伸し写真と網目の引伸し印刷とでは本質的にちがう何かがあるようだ。
らくに全紙判に引伸しがきく35ミリ判のネガでも、印刷の網目に堪えるとは限らない。線がくずれて、描写の鮮明さが失われるのだ。
土門拳 古寺を訪ねて―奈良西ノ京から室生へ
土門 拳
小学館 (2001/09)
P79
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