SSブログ

扶氏医戒之略 [医学]

 緒方洪庵の「医戒」についてはすでに触れたが、洪庵がフーフェランドの著書を読み、洪庵自身の倫理的解釈をもとに要約したもので、洪庵がその文章につけた題名は「扶氏医戒之略」ということになっている。
 ~中略~
「医師がこの世に存在している意義は、ひとすじに他人のためであり、自分自身のためではない。これが、この業の本旨である。ただ、おのれをすてて人を救わんことをのみ希(ねが)うべし」
「病者に対しては、ただ病者を視よ。貴賤貧富で視てはいけない」
「病者を弓矢にするな」
ということは、試験台にするなということである。病者ヲモッテ正鵠(せいこく)トスベシというのが洪庵の原文であった。正鵠とは弓のマトの中央の黒点のことである。~中略~
「医師というものはあまり変人であってはいけない。世間に対し衆人の好意を得なければ、たとえ学術卓越し言行厳格なる医師であっても病者の心を得ることができず、従ってその徳をほどこすことができない」
というくだりになったとき、蔵六はふと、
「この項にかぎって、わたしは医たる者にむいておりません」と、小さくつぶやいた。  

花神〈上〉
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P394  

IMG_0044 (Small).JPG大谷山荘

P376
 学問好きは経歴にとって(67)「さまたげの石」になる、と学究的開業医が考えたとしたら、それはおかしなことだと言わねばなるまい。
本の虫のような開業医は決して成功しないかもしれない。書物に精通するするあまり、得た知識を実地に応用できないかもしれない。
あるいは、彼の失敗の原因は本を読みすぎたからではなく、それ以上に人間について学ばなかったからかもしれない。
彼は、私がすでに警告した例の気おくれ、内気さを克服していないのだ。

P392
(67) さまたげの石(stumbling-block):旧約聖書、イザヤ書、八:十四:新約聖書、ローマ人への手紙、九:三三。その他、聖書にはこの語がたびたび引用されている。

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)


ナトリ博士は同著書(住人注;「日本医療へのアドバイス」(注1)という本を書いた、米国ハワイ大学臨床教授(産婦人科学)シゲオ・ナトリ博士)のはじめに「よい医師を、さらに良くする4C」というのを書いています。つぎの、四つの心がけです。
Competence 医師はまず有能でなければならない。十分な医学知識を身につけ、手が器用であるうえに、方法が確かでなければならない。
Communication 医師が患者をよく理解するだけでなく、患者にも、医師の説明がよくわかるようにする。患者と医師の、お互いの理解がたいせつである。
Concern     医師は、患者の疾患に対する関心と同時に、人間的な思いやりをもつこと。
Credibility    患者から信頼されるようにつとめる。個人的秘密や約束はよく守ること。
と、じつに簡単なことですが、これを日々実行していくのは、なかなかたいへんです。
藤田 真一(著)

患者本位の病院改革
新村 明(著),藤田 真一(著)
朝日新聞社 (1990/06)
P238


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント