嫉妬 [処世]
人間は生まれながらの格差よりも、身近な者との間に生じる新たな格差のほうに激しい嫉妬を感じる。
生まれながらの格差は自分の責任ではないと納得できるが、かって同等だった者が上位に昇るのは、いかにも自分の無能と不運を見せつけられるようで耐え難い。
「危機を活かす」
堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る
堺屋 太一 (著)
PHP研究所 (2004/12/7)
P51
P53
自由と楽しみを正義とするか、嫉妬を正義とするか。この選択が一番の政治問題だ。
(嫉妬を正義とすれば)サッチャー元英国首相がいったように、「金持ちを貧乏にしたからといって、貧乏人が金持ちになるわけではない。みんな貧乏になるだけ」である。
「「次」はこうなる」
P64
現在の日本の正義をつくりあげてきたものの一つは、嫉妬である。
最近の政治は、国民の中に渦巻く各種の嫉妬に迎合してきた、といっても過言ではない。
だから豊かな成功者は悪評を蒙(こうむ)り、貧しい庶民は慰めを得る。
「「次」はこうなる」
(京で一時の勢いを得たもので、栄えた例は一件もない)
と、蔵六はおもった。平清盛、木曽義仲、源義経、織田信長、明智光秀など、みな束の間に亡んでいる。
理由はいくつかあるが、ひとつには蔵六によれば他の大勢力の強烈な嫉妬を買うためであろう。
花神 (中)
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P101
【黒沢庄右衛門】(一七九六~一八五九)―処世―
うらやましがられぬ様ニいたす事、身を守るの一助とうけたまわる
幕末にも通貨危機はあった。藩の借金が膨れ上がると藩札が信用を失い通用しなくなる。
中津藩(大分県)がそうなったが、この藩では一人の茶坊主がそれを救った。黒沢庄右衛門だ。
身分の低い者が大仕事をやるとあとで必ず失脚して殺されるのが江戸の武家社会だがこの男は失脚はしたものの、身は無事だった。
日本人の叡智
磯田 道史 (著)
新潮社 (2011/04)
P82
憎しみは積極的不満で、嫉みは消極的不満である。
それゆえ、嫉みがたちまち憎しみに変わっても怪しむにたりない。
(「格言と反省」から)
ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P27
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