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トルコ共和国 [国際社会]

 トルコ共和国は、前身のオスマン帝国が崩壊した後、一九二三年に建国されました。オスマン帝国は、最後のイスラーム帝国でしたが、イギリスやフランス、ロシアによって領土を切り刻まれ衰退していきます。
~中略~
 相次ぐヨーロッパ列強の侵攻に猛然と抵抗したのが、軍人のムスタファ・ケマルです。後に、「父なるトルコ人」を意味するアタテュルクの称号を国会から与えられたトルコ共和国の初代大統領です。
 新生トルコ共和国は、前身のオスマン帝国とはまったくちがう性格をもています。 第一に、イスラームを国家から完全に切り離した世俗主義国家になったこと。第二に、「トルコ人」という民族からなる国民国家になった点です。

イスラームから世界を見る
内藤 正典 (著)
筑摩書房 (2012/8/6)
P138

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 内藤正典
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: Kindle版

 

TS3E0699 (Small).JPG呉市 下浦刈 三之瀬地区

P149
ここトルコという国にとって最大の難問なのですが、国民の大半はムスリムですから、彼らが望む政治を実現しようとすれば、どうしてもイスラーム的な要素を政治に取り込まざるを得ません。政治だけではありません、公教育、司法、行政のいたること路でムスリムは、敬虔であればあるほど、イスラームに従うことを望みます。

P142
 民族や宗教、宗派構成が複雑に入り組んだ中東で、一民族一国家はありえないことでした。
トルコ共和国の国民はトルコ人であり、国語はトルコ語であると決めてしまいましたが、このことが今までつづくクルド問題の原因となったのです。

P155
 トルコのように、これまで世俗主義者が軍の後ろ盾を利用しながら威張っていた国では、イスラームに傾斜することこそ、自由化と民主化の象徴のようになります。それにしても、世俗主義者の知識人やジャーナリスト、学者たちは愚かでした。かつて、公正・発展等政権が強くなる前、テレビの討論番組などをみていると、スカーフで髪の毛を覆っている女性を、時代遅れ、啓蒙されていないなどと平気で罵倒していました。
 世俗主義を礼賛してきた人たちの間違いは、善悪の判断をイスラームにゆだねる人たちを馬鹿にしてきたことに尽きます。自分たちこそ、西欧的で、近代的、民主的で先進的である、イスラームにしがみつく連中は、後進的で、無知だと公然と言い続けてきました。

P158
女性がスカーフを被って大学にいけるようにすることは、その象徴的な課題でした。ばかげたことですが、二〇一〇年まで、トルコの国立大学は、スカーフを被った女性の登校を禁じていました。 ムスリムのスカーフは、単純な話で、性的羞恥心の対象となる部位を覆っているだけのことです。
コーランには明示的に、スカーフを被れと命じる文言はありません。預言者ムハンマドの慣行をまとめたハディースに出てくるものです。意味するところは、陰部を隠せというだけで、女性の頭髪がセクシュアルなら隠す対象になるだけのことです。

P153
 トルコでは、軍と世俗主義政党の弱体化にともなって、あっというまに再イスラーム化が進んでいます。 私も、こんなに早く世俗主義の体制が壊れるとは思っていませんでした。しかも、再イスラーム化の過程と民主化の過程は重なっているのです。ここが、今後の中東・イスラーム世界のゆくえを考えるときに、たいへん重要なポイントになります。

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 内藤正典
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/09/25
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