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競争は避けられない [経営]

  本章では、かの有名な「ポーターの競争戦略論」をとっかかりにして、競争戦略論のフロンティアについてお話視しましょう。  経営学を少しでもかじったことがある方なら、競争戦略といえば、まずはハーバード  大学のマイケール・ポーター教授の名前が浮かぶのではないでしょうか。
~中略~ファイブ・フォース」「バリュー・チェーン」といった分析ツールは、ポーターが生みだしたり発展させたものです。
~中略~
 持続的な競争優位を実現するために企業はどうすべきか、それを説明する上で代表的なものはポーターの考えです。 経営学では、「Structure(構造)、Conduct(遂行)、Performance(業績)」の頭文字をとってSCPパラダイムと呼ばれます。
~中略~
 SCPを一言で表せば、それは「ポジショニング」に尽きます。企業は優れたポジションをとることで持続的な競争優位を獲得できる、ということなのです。
~中略~

 ビジネススクールの経営戦略論の授業でほぼまちがいなく勉強するのが、ポーターの生み出したファイブ・フォースという産業分析のツールですが、これはまさにSCPパラダイムにもとづいたものです。
五つのフォース(圧力)とは「新規参入圧力」「企業間の競合圧力」「代替製品・サービスの圧力」「顧客からの圧力」「サプライヤーからの圧力」のことですが、これらのいずれの圧力が強くなってもその産業では競争の度合いが高まるため、SCPの観点からは望ましくないということになります。
~中略~

 さて、もうお気づきになった方も多いと思いますが、SCPのポイントは、かっこいい用語は使っていますが、早い話が「どうやって競合他社との競争を避けるか」ということにほかなりません。
 すなわち、ポーターの競争戦略とは「競争しない戦略」のことである、といっても差し支えないのです。(まるで禅問答みたいですが)。
なるべく競争の少ない産業を選び、ライバルよりもユニークなポジションをとれば、他社とガチンコで競争しないですむから、結果として安定した収益を得られる、すなわち持続的な競争優位が得られる、というのがその主張なのです。

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア
入山 章栄 (著)
英治出版 (2012/11/13)
P60

IMG_0038 (Small).JPG大分国東半島 姫島行きフェリー乗り場

P68 
(住人注;テューレーン大学のロバート・ウィギンズとテキサス大学オースティン校のティモシー・ルエフリが、一九七二年から一九九七年までの全米の四〇産業にわたる六七七二社を分析した)その結果、興味深い結果が示されたのです。それは以下の三点にまとめられます。
発見① アメリカでは「持続的競争優位」を実現する企業はたしかに存在するが、その数はすべてのうちの二~五%にすぎない。
発見② 近年になればなるほど、企業が競争優位を実現できる期間は短くなっている。すなわち、持続的な競争優位を実現することは、どんどん難しくなっている。これはアメリカの産業全般に見られる傾向である。
発見③ 他方で、いったん競争優位を失ってからその後ふたたび競争優位を獲得する企業の数が増加している。すなわち、現在の優れた企業とは、長いあいだ安定して競争優位を保っているのではなく、一時的な優位(Temporary Advantage)をくさりのようにつないで、結果として長期的に高い業績を得ているように見えているのである。
~中略~

 実はウィギンズとルエフリが研究を発表する以前から、競争優位を持続させることが難しくなっている可能性を指摘する学者はいました。
 その代表格が、ダートマス大学のリチャード・ダヴェニです。一九九四年に出版した著書で、ダウェニは企業間の競争が激化することで競争優位の持続性が難しくなってくる状況を「ハイパー・コンペティション」と名付けました。
ダヴェニの論点の中でも本症で重要なのは以下の三つです。
論点① 企業が競争優位を持続できる期間は短くなってきている。
論点② このようなハイパー・コンペティションの事業環境下では、一度競争優位を失ってもまたそれを取り戻す「一時的な競争優位の連鎖」を生み出すことが重要になる。
論点③ ハイパー・コンペティション下では、理論的には、より積極的な競争行動をとる企業のほうが高い業績を実現できる。このダヴェニの三つの論点のうち、まさに①と②の状況が実際に起きていることを、ウィギンズとルエフリの統計分析は明らかにしたのです。

P72
 経営学における「競争行動(Competitive Action)」とは、ライバルや消費者の目に見えるような自社製品・サービスに関する「動き」のことをいいます。たとえば、新製品を投入したり、製品をモデルチェンジしたり、おおがかりな販促活動を行ったり、あるいは価格を大幅に引き下げたりすることは、ライバルや顧客の目に見える競争行動です。
~中略~
 もちろん積極的な競争行動はそれだけコストがかかりますし、製品開発やモデルチェンジのためのリードタイムの短縮も求められます。したがって積極的な競争行動が、これらのコストを上回るだけの業績に寄与するのかどうかが重要になります。

P75
 彼(住人注;ヴァージニア大学のミン・ジャー・チェン)が、台湾の国立成功大学のハオ・チー・リンおよびノートルダム大学のジョン。ミッチェルと二〇一〇年に「ストラテジック・マネジメント・ジャーナル」に発表した研究では、台湾の一〇四企業二八一人の経営者へのアンケートデータを用いた統計分析を行い、(一)競争環境がハイパー・コンペティションになっていると認識している経営者のいる企業のほうがより積極的な競争行動をとる傾向にあること、そして(二)積極的な競争行動をとる企業のほうが、その後の株主資本利益率が高まること、を明らかにしています。

P81
 これまでの議論をまとめてみましょう。
▷ポーターの競争戦略論(SCPパラダイム)とはライバルとの競争を避けるための戦略、いわば守りの戦略のことである。
▷ウィギンズとルエフリの分析によると、近年では競争優位は持続的でなくなってきている。すなわちハイパー・コンペティションが進展している。
▷ハイパー・コンペティション下では攻めの競争行動が有効になる可能性がある。
▷SCPの主張する守りの戦略とダヴェニたちの主張する攻めの競争行動は、必ずしも相矛盾するものではない。しかし、この点はこれからの研究課題といえる。
~中略~
 この章を通じて、私がとくにビジネスに携わっているみなさんに考えていただきたいのは、(アメリカのデータではありますが)どうやらやはり企業のあいだの競争は激化している、という事実が経営学でも明らかになってきていることです。競争優位を持続できる企業はもはや全体の二~五%しかないのです。
~中略~
少なくとも、これまで通りやっていれば今の地位を保てるさ、という気楽な考えは現在の競争環境下では通用しないことを、これらの研究成果は教えてくれているのだと私は思います。

競争が好きなのと、目標達成の意欲が強いのとでは、大きな違いがあります。競争好きとは、ゼロサム・ゲームの中で誰かの犠牲と引き換えに成功することを意味します。
これに対し、目標達成の意欲が強い人は、自分自身の情熱を掻き立てて事を起すのです。偉大なリーダーの多くは、周りの人たちの成功に刺激され、やる気になっています。
 起業家として成功するには、闘争心を燃やすよりも、やる気に燃えた方がはるかに生産的です。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ (著), Tina Seelig (原著), 高遠 裕子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2010/3/10)
P197


P157
 生命はみな、欲を満たすことを求めています。欲を満たしてくれるものを手に入れることが、生きる目的として脳にインプットされています。
 ただし、人間にとって、欲を満たしてくれるものは、生存に必要な食べ物や住まい、衣服といったモノだけではありません。「承認欲」を満たせる記号―地位やブランドや学歴や要望、キャリア―なども含まれます。
 これらの記号は、数にかぎりがあります。だから同じものを求める人間同士で、奪い合いが始まります。勝ち取ることが「勝利」です。これが「競争」の始まりです。
 競争は、単純な奪い合いに留まりません。人間には「もっと有利な、もっと優越した、人より上の自分」を目指したがるという”貪欲”があります。貪欲は「このあたりでゲーム終了」とすることができません。貪欲が心にあるかぎり、どんな記号を、どれだけ手に入れても、「もっと別のものを、次の勝利を」という思いに突き動かされて、新しい競争へと参戦していきます。

P163
 この世界は、闘いと、言い争いと、心配事と、悲しみと、物惜しみと、「わたしがいるぞ」という慢心と、傲慢と、誹謗中傷に取り憑(つ)かれている。
 やがて必ず喪失にたどり着くさまをみて、私は空しくなった。
                    ―スッタニパータ〈闘い〉と〈武器〉の節
 競争という現実があることは、誰も否定できません。ときには、負けることで不利益を受ける、だから勝ちにこだわる必要が出てくることもあるでしょう。
 しかし、「勝つ」というバーチャルな価値だけにこだわると、終わりのない「競争」に突入します。完全な勝利(つまりやすらぎ)は、どこにもありません。
しかも、ほとんどの人は「負け」を味わうことになります。どこかで発想を切り替えないと、その負けの苦しみは、生涯つきまとうことになるでしょう。
 もっとも、仏教は「現実を否定しよう」(競争から降りよう)とは考えません。現実を鵜呑みにして、「迎合しよう」とも思いません。
考えるべきは、競争という現実に「自分はどう向き合うか」です。自分の態度を確立せよ、と仏教は語りかけるのです

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
草薙龍瞬 (著)
KADOKAWA/中経出版 (2015/7/31)


 新興企業に投資するベンチャーキャピタリストは投資先の会社の社長に、必ず「おたくの会社の競合はどこだ?」と質問する。
そう聞かれたときに「うちの会社には競合はいません」という経営者は、間違いなくアウトだ。競合がないということは、そこにマーケットがないと見なされるからだ。

僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史 (著)
講談社 (2011/9/22)
P175



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