「そんなこと初めからわかっていた」対抗策 [雑学]
わたしは学術関係者からビジネスマンまで、いろいろな集団を相手に、自分の研究に関する講演を相当な回数行っている。講演を始めたばかりのころは、まず実験について説明し、それから結果を教え、最後にそこからどんなことを学べるかを語るという順番で、話を進めることが多かった。
だが聴衆のなかには、結果を話してもまったく驚かず、しかもそれをわざわざ言いに来る人たちがよくいた。わたしはこれをかねがね不思議に思っていた。というのも、研究を行なった当のわたしですら、結果に驚かされることが多かったからだ。
彼らは本当にそれほど洞察力があるのだろうか?
なぜわたしより早く、結果の察しがついたのだろう?それとも、あとづけでわかっていたような気がしただけなのだろうか?
そのうちに、わたしはこの「初めからわかっていた」感に対抗する方法を思いついた。
実験の結果を、聴衆に予想してもらうことにしたのだ。まず実験の設定と、何を測定したかを説明してから、しばらく時間を与えて、結果について考えさせる。それからどんな結果が出たかを挙手で聞いたり、どこかに予想を書きとめてもらう。
そうやって聴衆が答えを選んでから、初めて結果を教えるのだ。さいわい、このやり方は効果てきめんだ。先に尋ねる方式にしてから、「初めからわかっていた」という反応を受けることはまずなくなった。
ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
早川書房 (2012/12/7)
P168
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