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昔話と日本人の心 [日本(人)]

 「鶴女房」のどの類話を見ても、突然現れる女性が鶴の化身であることは、最初は伏せられている。男は禁を犯したときはじめて、自分の妻の素性を知って驚くのである。そして、このことは夫婦別れの条件として自明のこととして受けとめられ、あれほど妻を愛していたかの如く見えた夫も、妻の出てゆくのを止めはしないのである。

 ここで比較のために、女性が烏に変身する西洋の昔話として、グリムの「カラス」(KHM93)を取りあげてみよう。話の詳細は略して骨組みだけを述べると、ある王女が母親の呪いによって「からす」にされてしまう。からすは森にすんでいたが、そこにやってきた一人の男に、自分はもともと王女であったことを告げ、自分を救済するための仕事を依頼する。男は烏の忠告に従わずに失敗したりするが、からす(王女)は彼を助け、男は仕事をやり抜くことで愛の証を示し、からすは王女へと変身、婚礼をあげようというところで、話はめでたく終わりとなる。

この話の展開と、われわれの「鶴女房」を比較すると、よくこれほどまでに逆の話が作れたものだと思えるくらい著しい対比を示しているのである。
~中略~
結末に至ると、日本の場合、女(鶴)の本性が露見して、離婚という悲劇的結末になるが、西洋の場合は、結婚というハッピー・エンドになる。このように詳細に比較すると、可能な限り逆の話を作ったと思えるほどの対比に驚かされるのである。本性の判明と結婚の事象の前後関係が逆転しているところも興味深い対比である。

昔話と日本人の心
河合 隼雄 (著)
岩波書店 (2002/1/16)
P193

DSC_0965 (Small).JPG川中不動と天念寺

P195
ところで、もともと動物であったものが人間の女性となり、人間と結婚する昔話は、わが国には相当あるのに、西洋ではまったくないのである。それどころか、これは日本だけの話と言ってもよさそうなのである。

P263
西ドイツの昔話研究家のレーリヒは、日本の昔話の特徴のひとつとして「老人がたびたび登場する」ことをあげている。これはむしろ、日本昔話の主人公としての爺さん婆さんのことを念頭においてのことであろうが、ともかく、老人が重視されることは、わが国の昔話の特徴のひとつとして考えていいだろう。


タグ:河合 隼雄
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