SSブログ

自分をだましてはならない [哲学]

 このように、人は自分のはったりを自分で信じるようになることが多い。このような行動を食い止めるか、少なくとも軽減することはできないだろうか?
実権で成績を正確に予想することに報酬を与えても、自己欺瞞 をとり除くことはできなかった。

ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
早川書房 (2012/12/7)
P177

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: Kindle版

 

P1000107 (Small).JPG

P179
 では自己欺瞞について、私たちはどういう立場をとるべきだろう?そのままにしておく?それとも排除した方がよいのだろうか?
自己欺瞞は、自信過剰や楽観主義に近いもので、この種のいろいろなバイアスの例に漏れず、よい面もあれば悪い面もある。よい面としては、根拠のない自信のおかげで、ストレスにうまく対処できるようになり、全体的な健康感が高まる、困難な仕事や退屈な仕事にとりくむ根気が出てくる、まったく新しいことを試す意欲がわいてくる、といったことがあげられる。
 わたしたちがこうしてまで、自分を欺くのは、一つには好ましい自己イメージを保つためだ。だからこそわたしたちは自分の失敗をごまかし、成功をアピールし(完全に自力によるものでなくても)、否定しようのない失敗をしたときには、他人や環境のせいにしようとする。
~中略~
 悪い面としては、人生をあまりにも楽観視して甘い考えで行動していると、万事がうまくいくと誤って思い込み、よりよい決定を積極的に下そうとしなくなるかもしれない。また自己欺瞞のせいで、著名大学を卒業したなどと偽って、自分の人生を「美化」していると、いずれ真実が明るみに出たとき大変なことになる。それにもちろん、一般的な欺瞞というものの代償がある。 自分や周りの人が不正直だと、だれもが疑心暗鬼になる。信頼のない場所では、生きていくのが何かと大変だ。
 人生のほかの側面と同じで、ここでもやはりバランスが大事だ。幸福(自己欺瞞のおかげでいくぶん増す)を求めつつも、将来のための最善の決定積極的に下す(かつ、現実的な自己イメージをもつ)必要がある。 バラ色の未来を夢見て、希望に胸をふくらませるのはもちろんすばらしいことだ。だがこと自己欺瞞に関する限り、過大な思いこみをもっていると、現実が押し寄せてきたとき、深く傷つくことになる。

P186
 カリフォルニア工科大学の一九七四年の学位授与式で、物理学者のリチャード・ファインマンは、卒業生に対するはなむけのスピーチでこう言った。
「第一の原則は、自分をだましてはならないということだ。自分というのは、最もだましやすい人なのだ」。
ここまで見てきたように、わたしたち人間は、根本的な葛藤に引き裂かれている。自分や他人を欺こうとする根深い傾向と、自分を善良で正直な人間と思いたいという欲求との葛藤だ。
そこでわたしたちは、自分の行動がなぜ妥当で、ときには称賛に値さえするのかを説明する物語を語ることで、自分の不正直さを正当化する。実際、わたしたちはじぶんをだますのがとてもうまいのだ。

 

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: Kindle版

 

 

 

人は想像によって、人生から完全な満足を得られぬことの埋め合わせをする。
人間の避けがたい運命と考えて、もっとも根本的な本能の多くを満足させることを諦めるのだが、諦めるのはなかなか辛い。
そこで、名誉欲、権力欲、愛欲などが阻まれると、人は空想を用いて自分を欺く。現実に背を向けて、何のさまたげなしに欲望を満足させるような作り物の楽園に向かう。
そして虚栄心からこの心的作用に特別な価値を持たせ、想像力の駆使は人間の最も崇高な行為であるように思い込む。
しかし、想像することは失敗である。現実に直面して敗北したことを承認することだからだ。
(「作家の手帳」一九三三年)

モーム語録
行方 昭夫 (編集)
岩波書店 (2010/4/17)
P13

モーム語録 (岩波現代文庫)

モーム語録 (岩波現代文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/04/17
  • メディア: 文庫

 


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント