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がん疼痛治療法 [医学]

 がんの早期では約三割、末期では七割が体験するという痛み。特に末期の痛みは強く、耐えられないほど激しい場合もある。しかし痛みを緩和する態勢は整っていない。
 痛み治療に取り組む医師や看護師の団体が二〇〇六年、全国の医師一〇〇〇人に調査した結果、世界保健機関(WHO)が一九八六年に発表した苦痛緩和の世界的指針「WHO方式がん疼痛治療法」の基本原則(→解説14)を「聞いたことがない」「聞いたことはあるが内容は知らない」と答えた人が四七%。 がん治療に取り組む医師四三一人に聞いた別の調査では、入院患者に痛みの治療をしている割合は「一割未満」が六〇%。ほとんど痛み治療をしていない医師が過半数を占めた。

大切な人をどう看取るのか――終末期医療とグリーフケア
信濃毎日新聞社文化部 (著)
岩波書店 (2010/3/31)
P65

DSC_9778 (Small).JPG平山温泉

P113
中村(住人注;中村仁一 中村仁一 ) その点、がんはけっこうな病気だと思いますよ。人間はみんな致死率100%の『未決の死刑囚』ですからね。がんで手遅れと言われたら、執行日が近未来にほぼ確定して、準備ができるんですから。
近藤(住人注;近藤誠  近藤誠) 本物のがんだと闘病期間も短いから、まわりが大事にしてくれて至れり尽くせりだし、亡くなったら泣いてもらえるし。
中村 ただし治療しなければ、の話です。今は9割の人が医療死、つまり病院死をして、死ぬ前にたっぷりと地獄を味わわされています。
~中略~
中村 ~前略
  しかし患者はみんな、手術で痛んだり、抗がん剤で苦しむわけです。その治療の痛みを、当人も周りも「がんの痛み」だと思いこんでしまう。ぼくらもそう思いこんでいました。
老人ホームに移って、強烈な痛みや苦しみを伴うのはがんのせいじゃなく、治療のせいなんだとくわかりましたよ。 近藤 治療で苦しんでも、なにかメリットがあればいいんですけど。日本ではあい変わらず、前立腺がんの多くは見つけ次第切り取られています。
また日本人のがんの9割を占める「固形がん」のほとんどは抗がん剤で治ることはないし、延命効果さえ「ある」ときちんと証明されたデータが見あたりません。
中村 となると、ほとんどの抗がん剤治療には、副作用と縮命効果しかないということになりますね。
近藤 そうです。固形がんというのは胃がん、肺がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんのような、かたまりを作るがんです。つまり日本人がよくかかるがんには、抗がん剤は効かない。抗がん剤で治る成人のがんは全体のほぼ1割にすぎません。急性白血病や悪性リンパ腫のような血液のがん、子どものがん、睾丸の腫瘍。それから子宮の絨毛がん。

P117
中村 ~前略 「がんだとわかった今の時点(末期)まで痛んでないから、最後まで痛まないと思いますよ」って説明できるようにもなりました。
 ずうっと思ってはいたんです。自然のしくみは、不自然なことをしなければ、穏やかに安らかに亡くなっていけるようになっているはずだと。死に時が来たら食べなくなるのも、生きものにとっては当たり前のことで、無理やりチューブで栄養をとらせたりするのは、患者を苦しめるだけだと。

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)

P62
中川 そうですね。そのモルヒネを一度に注射すると中毒症状はあるんですが、口から飲むと、中毒症状はないんですよね。
養老 そうですね。それは、僕らも薬理の講義できちっと教わりましたね。要するに注射というのは、非生理的ですよね。つまり、自然の状態で起こること、この場合はモルヒネを含んだ植物を食べるということであって、そういうことに対して動物は強いっていうわけでね。
中川 血中濃度の変化が緩やかですと中毒症状っていうのは起こらないんですね。そのモルヒネを飲むということを基本にしたがんの疼痛(痛み)の考え方には、WHO(世界保健機構)で提唱されている三段階階段方式というようなものがあります。
まず、頭痛薬のような軽い痛み止めからはじめて、徐々にモルヒネのような強い麻薬系の薬に移行する。こういうWHO方式のがんの疼痛コントロールは、極めて単純で定式化されているものなんですが、これも実は残念ながら知らない医療者が多いんですね。決してむずかしいことではないんですけれども、要するに関心がないんですね。

P78
中川 (住人注;欧米と比べて患者さんが)辛抱強いですよ。モルヒネを使わない方が長生きするというふうにも思っておられる。それは逆なんですけどね。やはり痛みがないほうが、結果的には長生きするんです。

P104
養老 前略~
たとえば、いまのこの痛みをじっとがまんして、人生はがまんの上に成り立つんだよなどと考えていたとしてもですよ、「おれ、死ぬんだよな」という話になったときに、「待てよ、おいおい痛みをがまんしてどうするんだよ」という話に、当然なりますよね。

自分を生ききる -日本のがん治療と死生観
中川恵一 (著), 養老孟司 (著)
小学館 (2005/8/10)


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