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がんは治るのか [医学]

 国民全体に深く浸透しているイメージがあります。がんという病気は、死に直結する悪いものであり、それが治るというのは、「希望」「安心」「幸福」、治らないというのは、「絶望」「不安」「不幸」。
だから、「つらい治療にこそ希望がある」「治療をあきらめたら絶望しかない」ということになってしまう。このような考え方が、「がん難民」を生んでいるんです。
 「治療と病気と人生」の関係を考えてみましょう。「治療が人生のすべてで、それがなくなったら自分の人生は終わりだ」と思い込んでいる人がいますが、よく考えれば、治療は病気への向き合い方の一部にすぎなし、病気自体も、人生の中の一部にすぎない。
治療というのは、大きい人生に比べれば、ごく一部にすぎないわけで、そこに気づけば、もっと楽になると思うんですね。
 治るか治らないかというのは、それほど重要なことではない。そこに、運命の分かれ目があるかのような幻想を持ってしまう。からいけないんです。病気があろうとなかろうと、患者さんが幸せに日々を送れているかどうかが重要です。がんを抱えながら普通に仕事をして、普通に家族と暮らしている患者さんは大勢います。

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P71

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 大型本

 

DSC_0910 (Small).JPG両子寺

P72
 がん細胞をゼロにすることを「治る」と定義するのであれば、進行がんが「治る」ことはありません。ですので、そういう意味での「治る」ことを目標にすることはできません。
~中略~
 糖尿病とか動脈硬化も、一度なったら基本的に治らないし、いずれは死に結びつくわけですので、その点は、がんと同じです。でも、「あなたは糖尿病です」と病名を告知されて、絶望の淵に落とされるという人はあまり多くありません。
同僚にも気軽に話せる人が多いと思います。これが、がんになると、なぜか「絶望」「隠すべきもの」になってしまうのです。こういうイメージを払拭してから、治療目標を冷静に考えるべきだと思います。
私(住人注:本稿では筆者の発言か、取材先の医師の発言かあいまいな文が多いのだが、高野利実 医師?)が患者さんに説明するときによく使うのは、「がんとうまく長くつきあう」という目標です。「うまく」というのは、がんの症状や治療の副作用による苦しみを和らげながら、できるだけいい状態を保つことで、「長く」というのはそういう時間をできるだけ長く過ごすこと、すなわち「延命」です。がんとうまくつきあって、天寿をまっとうできたとしたら、それは「治る」のと同じではないでしょうか。

P76
 確かに、科学は進歩しており、新薬開発も進んでいますが、それでがんが克服できるわけでも、人間が死ななくなるわけでもない。~中略~
「人が死ぬのは、担当した医者が悪かったからだ」という雰囲気すらあります。

P77
マスコミは、ドラッグ・ラグが根本的な問題であって、それが解消すればすべてが解決するかのような論調で報道していますが、このような報道によって、問題は矮小化され、国民の過剰な期待だけが膨らんでいます。
アメリカで使える薬が、今すぐ日本で全部使えるようになったとしても、それで、「絶望の壁」がなくなるわけではないし、「がん難民」がいなくなるわけでもありません。
~中略~
 今の医療は、進行がんの患者さんに、「溺れている」と思い込ませ、その上で、「これにつかまればいい」と言って、ワラをばらまいているようなものです。
マスコミは、この状況を煽り、「もっとワラを増やさなければいけない」と声高に主張をしています。そして、この状況に乗じ、ワラを売ってボロ儲けしている民間療法の業者がいるわけです。
取材・文/北健一(ジャーナリスト)

 

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 大型本

 

 

P1
 がんが増えています。10年後には、2人に1人ががんで死亡すると予想されています。
がんは高齢者ほど発生しやすいため、高齢化が進むほど多くなるからです。高齢化社会では、手術か抗ガン剤などの、体に負担の大きな治療は難しくなり、症状をうまく緩和しながら、できるだけがんと共存していくことが大事になってきます。
 しかし、現実には、まだまだ無意味な抗ガン治療と、激しい痛みを伴う無惨な死が少なくありません。  がん治療の進歩によって、がんに罹患した方の半数以上が治癒できるようになりました。しかし、いまだ半数近くの方が、がんで命を落としています。
がんという疾患の本質なのですが、初回治療が成功しなかった患者さんは、数カ月から数年で、大半が激しい痛みを経験しながら死亡することがほとんどです。

P3
 不幸中の幸いではありますが、がんが治らないとわかっても、死を迎えるまで数カ月から2年程度の猶予があるのが普通です。この貴重な時間を、痛みをがまんすることにだけ使ってよいはずないでしょう。
 人生の時間が無限に続くとする錯覚が現代日本人には蔓延しているように思えます。

P22
 がんは、転移するようになると、手がつけられません。転移してしまったがんは、基本的に治癒しません。
ちなみに、がんの治癒とは、治療のあと5年経っても、再発していない状態を指します。5年生存率が治癒率と同義として使われます。
 ただし、乳がん、前立腺がんなどの、進行がゆるやかながんは、5年後にも再発することがあり、10年生存率が使われます。乳がんなどは、治療後20年して再発することもめずらしくありません。
中川恵一

自分を生ききる -日本のがん治療と死生観
中川恵一 (著), 養老孟司 (著)
小学館 (2005/8/10)

自分を生ききる -日本のがん治療と死生観-

自分を生ききる -日本のがん治療と死生観-

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/06/06
  • メディア: Kindle版

 


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