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絶対とか100%ってのは医療にはありえない [医療]

「患者さんが、医療を利用するケースはふたつあります。
ひとつは、回復する可能性があるかどうか。良くなる可能性があるかどうか。良くなる可能性があるならば利用した方がいい。
もうひとつは、生活の中身です。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)ですね。
生活が改善する可能性が高い場合です。ただ、医療ってのは不確実性ですから、やってみないとわからない。絶対とか100%ってのは医療にはありえない。良くなる可能性が高ければ医療を利用すればいいだけです。
メシが食えなかったのに食えるようになればいいし、歩けなくなったのが歩けるようになる可能性があるなら、一応やってみたらいいと思います。ただ、期待通りにならなかったケースがいくらでもあることだけは知っておいてほしい」
中村仁一

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P138

DSC_0922 (Small).JPG両子寺

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 大型本

 神経芽腫は、交感神経や副腎の元になる細胞に由来する性に特有の腫瘍で、小児にとっては脳腫瘍に次いで頻度の高い神経系の腫瘍です。~中略~
わが国でも、生後6ヶ月の乳児を対象に、1984年からスクリーニングがおこなわれました。
 スクリーニングをして早期発見、早期治療をして神経芽腫の死亡率を減らそう、という発想は極めて妥当です。しかし、2004年には中止されています。中止にいたった理由は、欧米の二つのグループから、スクリーニングをしても神経芽腫による死亡率は減少しない、という論文が発表されたことによります。いずれの研究も、スクリーニングをおこなった地域とおこなわなかった地域における死亡率を比較したものです。 
 どうしてこのような結果になったかというと、神経芽腫には自然退縮する、すなわち、放置しておいても勝手に治る症例が相当数ある、ということがあげられます。
スクリーニングは鋭敏ですから、ほうっておいても大丈夫な患者さんまでひろいあげてしまっていた可能性が高いのです。治療にはある程度のリスクが伴いますから、おそらく、その影響とスクリーニングによるピックアップが相殺して、死亡率に違いが認められなかったのでしょう。多くはないかもしれませんが、うけなくてもよい治療をうけて亡くなったお子さんもおられる可能性があるのです。
 神経芽腫は特殊な例なのかもしれませんが、このような事例があったことは、頭にいれておいたほうがいいでしょう。よかれと思ってやってみても、必ずしも思いどおりの結果になるとは限らないのです。これは、早期発見、早期治療に限らず、けっこう世の中にありふれていることのように思います。

こわいもの知らずの病理学講義
仲野徹 (著)
晶文社 (2017/9/19)
P216

こわいもの知らずの病理学講義

こわいもの知らずの病理学講義

  • 作者: 仲野徹
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2017/09/19
  • メディア: 単行本


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