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悲しいけど人間はごまかす [社会]

 不正が社会的感染をとおして人から人へと伝わるという考えは、不正を減らすにはいまとは違う手法が必要だということを示唆している。
わたしたちはささいな違反行為を、文字どおりささいで無害なものと考えがちだ。しかし、微罪は、それ自体とるに足りなくても、一人の個人や大勢の人、また集団のなかに積み重なるうちに、もっと大きな不正をしても大丈夫だというシグナルを発するようになる。この観点から言うと、個々の逸脱行為がおよぼす影響が、一つの不正行為という枠を超え得ることを認識する必要がある。
不正は人を介して伝わるため、ゆっくりと気づかれずに社会を浸食していく。「ウィルス」が人から人へと変異しながら感染するうちに、倫理性の低い新たな行動規範が生まれる。このプロセスは目立たず緩慢だが、最終的に破滅的な結果を招くことがある。
これが、どんなにささいなものであれ、ごまかしがもたらす真のコストなのだ。だからこそ、ほんの小さなものも含め、あらゆる違反行為を減らすとりくみを、ますます気を引き締めて行わなくてはならない。

ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
早川書房 (2012/12/7)
P240

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: Kindle版

 

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P242
 正直な行為は、社会的な道徳心を育むうえでこのうえなく大切だ。また社会的感染を踏まえて、とくに優れた道徳的行為を、たとえ、センセーショナルなニュースにはならなくても、広く伝えていく必要がある。立派な行動の華々しい例やリアルな例に学べば、社会的に受け入れられる行動、受け入れられない行動についての認識を改め、やがて自分自身、よりよい行動をとれるようになるかもしれない。

P254
 ここまでの集団でのごまかしに関する実験から、二つの力が作用していることがわかった。人は利他的な傾向があるため、自分の不正によってチームメンバーが利益を得る状況では、ごまかしを増やすが、その一方でメンバーによって直接監視されることには、不正を減らし、場合によっては完全に排除する効果もある。

P261
 当然だが、わたしたちは他人の助けがなくては生きていけない。協働は生活に欠かせない要素だ。しかし、協働が諸刃の剣だということもはっきりしている。協働は一方で楽しみや忠誠心、モチベーションを高める。だがその一方で、ごまかしの可能性も高めるのだ。
つきつめれば―またとても悲しいことだが―同僚のことを一番気にかけている人たちが、一番たくさんごまかしをしてしまうのかもしれない。もちろん、集団で仕事をするのはやめ、協働を中止し、互いを思いやるべきではないなどとは言わない。だが協働と親近感の高まりに潜む代償は、肝に銘じる必要がある。
 もしわたしたちが協働することで不正直になってしまうのなら、何か対策はあるだろうか?すぐに思いつく答えが、監視を強化することだ。実際、企業不祥事が起きるたびに、政府の規制当局がおきまりのようにとる対応がこれだ。~後略

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: Kindle版

 


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