病気などしている暇はない [養生]
さらにプラトンは言葉を続けて次のように言う。アスクレピオスはその子孫に病を気にやむ人を癒すための医術を教えなかったが、それは、秩序ある国家で仕事を持つ人々は病気などしている暇がないことを知っていたからである。
大工が病気に罹ると、医者に頼んで、手荒だったが手っ取り早い治療をしてもらう。吐剤または下剤をかける、あるいは焼いたり切断をしてもらう、というのがその治療法である。万一医者が食事療法をとらせたり頭に包帯を巻くなどの治療を命ずるならば、その大工は「病気のことに注意を向けて、課さられた仕事をなおざりにしながら生きていても何の甲斐もない」という。
そしてその後は、「そのような医者には別れを告げて、いつもの生活へと立ちかえり、健康を回復して、自分の仕事を果しながら生きて行く。またもし彼の身体がそれに堪えるだけの力がなければ、死んで面倒から解放されるのだ。
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P91
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