心の最貧国 [日本(人)]
日本は世界でも突出して自殺が多い国である。自殺者は一九九八年に三万人を超え、以来高止まりが続いている。十六分に一人が、日本のどこかで自ら命を絶っているという現実。
発展途上国では、生きていたくても飢えや病気やテロで命を落とす人が大勢いる。比べものにならないほど豊かな日本でなぜ?という疑問がわいてくる。
皮肉なことだが、その豊かさが問題なのである。
ここでいう豊かさとは、心の豊かさではなくモノの豊かさである。物質的に豊かになれば幸せになれると誰もが信じた時代は、日本では二十年前に終わっている。
モノが増えて便利になった反面、人は他人に無関心になり、自分のことばかり考えるようになり、心の通い合いやおせっかいが減った。
途上国の人たちの命を奪うのは飢えや病気だが、先進国の人にとって最大の敵は孤独である。
気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P32
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