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固執しない [哲学]

其の安きは持(たも)ち易く、其の未だ兆(きざ)さざるは謀(はか)り易し。
其の脆きは溶泮(と)けしめ易く、其の微なるは散じ易し。
之を未だ有らざるに為し、之を未だ乱れざるに治む。
合抱の木も、亳末より生じ、九層の台も、累土より起こり、千里の行も、足下(そっか)より始まる。
為す者は之を敗(やぶ)り、執する者は之を失う。是を以て聖人は、為すこと無し、故に敗るること無し。
執すること無し、故に失うこと無し。
民の事に従うは、常に幾(ほとん)ど成るに於て而して之を敗る。
終を慎むこと始の如くなれば、則ち敗るる事無し。
是を以て聖人は、欲せざることを欲す。得難きの貨を貴ばず。学ばざることを学ぶ。
衆人の過ぎたる所に復(かえ)し、以て万物の自然を輔(たす)けて、而も敢て為さず。

老子
小川 環樹 (翻訳)
中央公論社; 改版 (1997/03)
P143

一乗寺 (2).JPG一乗寺

~中略~
じっとしているあいだはとらえやすい。まだ兆しが現れないうちは処置しやすい。
もろいものは融けやすく、微小なものは消滅させやすい。まだ何でもないうちに処理し、混乱が大きくならないうちに秩序だてておくことだ。
ひとかかえくらいの大木でも、毛すじほどの目からはえるのだし、九重の高さの築山でも、ひと盛りの土から築きはじめられるし、千里の遠方への旅行も、足もとからふみ出されるのだ。
何かしようとするものは害をあたえ、固執するものは失うであろう。
それゆえに聖人は、何もしないから何もそこなわず、何ものにも固執しないから何ひとつ失わない。
人々が仕事をする場合、いつでも完成に近づいたときにだめにしてしまう。「やりはじめと同じく、終わりぎわを慎重にせよ」。 そうすれば仕事がだめになることはない。
それゆえに、聖人は欲望を起こさないように望み、手に入れにくい品物をとうといものとはしない。
学ばないように学び、大衆の通りすぎてしまったあとへみなをもどらせる。
こうして万物がその本性(もちまえ)に従うことを助けてやる。しかし、行動することを進んではしないのである。

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