結婚の基盤 [人生]
「実際の話、便宜上の結婚では、双方とも期待が少ないものですから、失望も少ないのです。
お互いに対して無意味な要求をすることもありませんので、腹を立てる理由はありませんでしょ。
完璧を求めませんから、お互いの欠点に対して寛容になれますわ。
情熱に燃えるのも結構でしょうが、情熱は結婚の基盤としては適切ではありません。
いいですか、結婚して幸福になるには、お互いに尊敬しなくてはなりませんし、身分が似通っていて趣味も同じがいいですね。
そうして、二人がまともな人間で、進んでギヴ・アンド・テイクをし、相手も生かし自分も生かす気があれば、そういう結婚なら私どもの結婚と同じように幸福なものとなりますわ」
(「便宜上の結婚」一九〇八年)
行方 昭夫 (編集)
岩波書店 (2010/4/17)
P93
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