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バイオフィリア [言葉]

現代の知の巨人とよばれるアメリカの生物学者ウィルソンは、著書「バイオフィリア―人間と生物の絆」(狩野秀之訳 一九九四年 平凡社)の中で次のような文章を書いている。

 ヒトの脳は、ホモ・ハビリスの時代から石器時代後期のホモ・サピエンスに至る約二〇〇万年のあいだに、現在のかたちに進化してきた。
その間、人々は狩猟採集民として群れをつくり、まわりの自然環境と密接な関係を保って暮らしていた。そのなかでは、蛇は重要な存在だった。
いや、水の匂い、ハチの羽音、植物の茎がどちらの方向に曲がっているかさえ重要だった。その時代には、「ナチュラリストの恍惚」は適応的な価値を持っていた。草のなかに隠れている小動物を見つけられるかどうかで、その晩の食事にありつけるか、腹を空かせたままでいなくてはならないかが決まるのである。
未知の怪物や這い寄ってくる生き物を前にしたとき覚えることだろう。そうした感覚は、現在の不毛な都会のただなかに住むわれわれでさえ感じることができる。

   数百万年もの間、狩猟採集を続けてきたわれわれ人類の脳は、その生活に適応して、生物の習性に特に興味を感じるような構造に組み立てられているというわけである。
そういう”癖”の脳を備えた祖先がより多く生き残り、数百万年の間に数を増していった。そして現在のわれわれにつながっているというわけである。
 もちろん、われわれの脳には、そのような癖以外にもさまざまな適応的な癖が備わっている。そして、どの癖が特に強く活性化されるかは、人によって違うだろう。

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学
小林 朋道 (著)
築地書館 (2007/03)
P106

 

宇治川 (26) (Small).JPG 宇治川

P108
ウィルソンは、このような、生物に対する感情を総称して「バイオフィリア」とよんだ。
そして、バイオフィリアという脳の癖は、生物そのもの以外に、生物同志の相互作用や生物と無生物(水や土など)との相互作用、いわゆる生態系という言葉で表現される対象に対しても作動すると予想している。


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