病気と患者との三角関係 [医療]
みなさんがお医者さんになって患者さんを診ているときに、いちばん最初に患者さんを保護するようにしてあげますよね。
そのとき保護することだけをやっていたら、患者さんは「される側」になってしまうし、こっちは「してあげる側」になり丸抱え込みになってしまう。そうすると、すばらしい治療者のようだけれども、これでは患者の自助能力を阻害するかもしれない。せっかく育つところをだめにするかもしれない。
だから、それをするのはどういうときかと言ったら、自助の能力がないような状態のときだけです。赤ん坊とか、意識のない人とか、ひどい認知症の状態とか、そういうまったく自助能力が育ってくる見込みがない、差し当たって本人が無力だと思ったときにはこれでやる。
しかし本人に何らかの自助能力があると思ったときには、みなさんにぜひこれおをしてほしい。ここは覚えていたらいいし、ここだけでも覚えて帰ってください。
それは「三角形の関係」。三角形の関係とはこういうことです。ここに何か解決しなくてはならない問題を置きまして、ここに患者さんを置きまして、ここに治療者を置く。
これが三角形の関係になるようにするの。病気なら病気という問題を間に置いて、こっちに治療者がいて、あっちに患者さんがいて、二人でこの問題を眺めているという、この関係が今、医療関係の中でとっても大事なの。
神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治
(著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
P233
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