SSブログ

鵜飼 [雑学]

 鵜飼というのはまことに奇妙な漁法だが、「日本書紀」にも「古事記」にも出ているから、よほど古い漁法なのであろう。
 だれが発明したものでもなさそうで、中国のとくに江南の地には、杜甫の詩に詠まれた昔から(むろん、それ以前から)ごく一般的に存在している。
だから、古代アジアにあっては、この技術を中心にした血族集団がいろんな河川に住みつき、ときには分岐しているあらたな河川をさがして移動していたものにちがいない。

街道をゆく (8)
司馬 遼太郎(著)
朝日新聞社 (1995)
P168

DSC_4554 (Small).JPG求菩提山

P169  昔はどの川の鵜匠もそうだったと思われるが、鮎を献上するために領主から特別に身分上の保護をうけていた。そのために長良川の鵜匠たちもそうだが、川の武士だというふうに、ひどく気位が高く、こんにちなおそんな気配がある。
「この日田の鵜匠もそうですか」
 仲居さんにきくと、彼女の表情に鵜匠への素直な敬愛がありありとうかんで、ハイとうなずいた。

P170
仲居さんは、鵜についてもくわしかった。鵜には海鵜と河鵜があって、河鵜は一年中河川などに住み、体も小型で、馴らしやすいという。しかし日田で用いられているのは、海鵜である。
海鵜は渡り鳥で、主として外界に住んでいるから体も大きく、気象もたけだけしい。
「その海鵜を、鵜匠さんが自分で玄界灘などに行って捕ってくるのですか」
と聞いてみると、彼女はお行儀よく微笑して、
「いいえ、捕ってくるひとは、べつにいらっしゃるんです」
と、いった。そういう稼業の人がべつにいて、かれらはよさそうな海鵜をつかまえては各地の鵜匠に売りにくるという。いろんな商売があるものである。


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント