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修業験得 [見仏]


筆者は以前山伏の人たちとよく山に分け入り、その修行を時折り観察させてもらった。積雪の中の寒中行は、自分自身厳しさを体得したが、その中で山伏たちの滝行には異様なものを感じた。素裸の行者の体から白い煙のようなゆげが立ちのぼる様は、信仰というものがなくては出来ないわざであった。
~中略~
 あるとき、一四、五人の山伏たちに同行し、野宿の一泊行に山に入ったことがある。これは一つの集団の修行で、若い山伏に種々なものを初体験させるものであった。
~中略~
 目的の山中の洞窟に着くと、先逹は腰に巻いていた白い布をほどき、それを木々にゆわいつけ、ただちに神々や諸仏をその白布に勧請した。やがて一行はその前で勤行を始めた。
勤行が終わると、同輩の一人の山伏は気分が悪いと横に臥した。他の山伏は、早速降霊術で物怪(もののけ)を取り払った。すると臥していた山伏は気分がよくなったといって起き上がった。
 またあるとき、二人の行者が求菩提山の山頂で一週間の断食行に入った。この間、般若心経を一万巻奉唱した。一日目はそでほど疲労をみせなかったが、二日目から疲労の度が増し、心経の奉唱のスピードがやや落ち、三日目が疲労の最高潮で、夜になると行者たちの耳に何か聞こえるものがあったという。また目の前のお堂が真っ赤になって焼け落ちるようであったともいう。四日目の朝、夜が明けるとさわやかな気分になり、小鳥の声を聞き、朝日が樹木の中からだんだんさしこんでくると、まるで浄土のようであったという。
~中略~
 山伏の行う修験とは、「修業験得」といい、修行の中で「験(しるし)」を得るということである。その験とは、前述のようなものを言うのである。したがって、霊を信じ仏を信じるのである。

山伏まんだら―求菩提山(くぼてさん)修験遺跡にみる
重松 敏美(著)
日本放送出版協会; 〔カラー版〕版 (1986/11)
P131

DSC_4674 (Small).JPG求菩提山


タグ:重松 敏美
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